賃金引き上げに向けた取組事例

人手不足の時代、人材確保に向けた取り組み

サービス業全体で人手不足感のある中、特にホテル業界は人材確保において厳しい状況下にある。非大手チェーンのホテルの場合、同じエリア内での相場よりも良い時給額でなければ応募が来ないのが実情だ。それを打破するための経営戦略として、賃金の引上げが必要であると判断。また、コロナ禍で稼働が減る中、人員を削減せざるを得ない時期もあったが、他の仕事と掛け持ちしながらも在籍し続けてくれる従業員もおり、そのような貴重な人材をつなぎ止めるためにも賃金引上げが必要であると考え、ベッドメイク等を担当するパート従業員を対象に、時間額100円の引き上げを実施した。
その結果、他の会社のパートと掛け持ちで働いていた方が、当社の仕事１本に絞ってくれる等、人材引き留めの効果が得られた。さらに従業員が友人等に声をかけて紹介してくれこともあり、新たな人材確保にもつながったという。

人材への投資、賃金バランスも考慮

お客様にお越しいただくためには接客サービスと部屋づくりが重要であり、これらの実現には人材がすべて。「従業員に安心して気持ちよく働いてもらうことは、お客様が快適にお泊まりいただくサービスの質にもつながる大切なこと」と語る武本社長は、設備投資と同じくらいの熱量で従業員の働く環境づくりに力をそそぐ。
長く在籍している方とそうでない方の賃金額のバランスは不公平感を招かないよう、最低賃金額近傍のパート従業員の引上げだけでなく、その上の長く勤務してくれているパート従業員にも一定の賃上げを行うこととした。

継続的な賃上げには集客・客単価の向上が不可欠

賃上げは固定費用の増加であり、仮に売上げが下がった場合を考えると厳しいのは間違いないが、今回の取り組みで人材確保につながったことは大きな成果と言える。
従業員が働きやすい環境づくりを続けることが、サービスの質の向上へとつながっていることに手ごたえを感じている。今後も継続して賃上げを行うためには、売上げの増加が必須である。これまで積み上げてきたことをベースに、いかにして集客し、客単価を上げていくか、重要課題として取り組んでいる。