賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 02
賃上げ取り組み事例

株式会社 バンダイ

ゲーム・玩具・アミューズメント製品

2023/1/10

玩具をはじめとした様々な分野で、主にキャラクター商品を開発・販売する事業を展開

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:竹中 一博
  • ●本社所在地:東京都台東区駒形
  • ●従業員数:833名(2022年4月現在)
  • ●設立:昭和25年7月
  • ●資本金:100億円
  • ●事業内容:玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品・食玩、アパレル、 生活用品・化粧品・雑貨などの企画・開発・販売
company

賃金を安定させ、企業理念を実現するための人材を確保

バンダイの人材ポリシーは、社員同士が志をひとつにし、個々の才能を発揮する「同魂異才」である。チャレンジするという企業文化を継続し、今後のグローバル戦略を推進するためにも、社員の生活の安定とモチベーションアップに加え、多様な人材を確保する必要性があった。
社員の報酬に関し、賞与は業績連動であったが、業績の向上もあり、給与全体に占める固定給と賞与のバランスがほぼ半々となった。業績に左右される賞与の比率が高すぎることとなったため、より安定的な報酬体系に変えることで、生活基盤においての安心感を与えるとともに、「同魂異才」の考えに沿った多様な人材の確保を図りたいと考えた。
これらを踏まえ、令和4年4月より報酬体系を変更した。業績連動型である賞与の一部を基本給に組み込むことで固定給である基本給の比率を見直し、基本給を全社員平均で27%程度、初任給で30%引き上げた。業績によって年間の給与総額が変動することに変更はないが、業績に関係なく支払われる固定給分が引き上げられたことで、社員のモチベーションアップにつながる、安心して働ける報酬体系にした。

社員との丁寧な合意形成、人材育成方針に合致した制度に変更

業績による変動がない基本給の引き上げは、社員が短期的な成果にのみ集中するのではなく、「同魂異才」としてチャレンジできる人材を育成することがねらいだ。
また、エンターテインメント企業の特性として、事業部門が多岐に分かれ業務内容も大きく異なるが、適時ジョブローテーションを行っている。できるだけ多くの部署を経験してもらう人材育成を社是としているため、「社内転職」と言われるほど異動が多い。専門を特化せず、様々な経験やチャレンジを通してより魅力的なIP※や商品・サービスを生み出すという企業文化であるため、異動や配転により大きく変動する可能性のある業績給や職務給ではなく、賃金のほとんどが役職とリンクした固定給で占められているという特徴がある。今回の固定給を引き上げるという形での賃上げは企業文化に合致した制度と言える。 ※キャラクターなどの知的財産
今回の報酬改定により、固定給である基本給は引き上げられたが、賞与は減少する。そのため、社員によっては不都合が生じるケースも想定し、社員への丁寧な説明を徹底した。また、説明会形式の動画を公開するとともに、人材採用戦略についてなど、会社のビジョンを分かりやすく示し、全ての社員から理解を得ることができた。

採用競争力を高めつつ、今後も企業風土に即した取り組みを

今般の報酬体系変更は、採用競争力向上の成果が得られたと実感している。特に、キャリア採用では募集条件のうち固定給が重視される傾向にあるため、取り組みを周知した後は応募者数がほぼ倍増した。
採用市場での競争が激化している中、スムーズに採用活動を行うことができたが、社内を含め、世の中は想像以上に速いスピードで変化している。現行の賃金制度に課題が生じる可能性もあり、状況に応じて対応できる柔軟さが求められる。
「同魂異才」を実現するための報酬体系でなければ、チャレンジするという企業風土も失われてしまう。未来を見据えながら、今後も必要な施策には適時取り組んでいく。