賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 03
賃上げ取り組み事例

岡谷熱処理工業株式会社

金属熱処理(真空熱処理)・真空浸炭・歪み極小熱処理技術・PVDコーティング・アトム窒化

2023/1/10

金属製品の熱処理・コーティング等に特化したメーカーとして、高精度な独自の熱処理技術でオンリーワンの製品を生み出す。

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:中澤 信貴
  • ●本社所在地:長野県岡谷市
  • ●従業員数:34名(2022年12月現在)
  • ●設立:昭和35年
  • ●資本金:1,400万円
  • ●事業内容:金属熱処理(真空熱処理)、真空浸炭、歪み極小熱処理技術、PVDコーティング、アトム窒化
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従業員のモチベーション維持、人材確保のために賃上げを実施

リーマンショックの影響で売上が減少した時期から人件費が圧縮された状態が続いていた。顧客から物品を預かって熱処理を行う業態であり、その技術自体が商品だ。完全に自動化された工場ではなく、人に頼る作業もある中で、些細なミスが大きな品質問題に繋がることもある。従業員が高いモチベーションを保って働いてもらうためには、賃金の改善が必要であると常々感じていた。この課題を解決するために、IoT化を進め、従業員の作業負担を軽減しながら生産性向上に取り組み、できる範囲で内部留保を従業員の賃金等に還元することとした。引き上げ幅は従業員ごとに人事評価に応じて決定し、令和4年4月には全体的に3.5%程度の賃金引き上げを実施した。
賃金引き上げの取り組みを通じて、昨年は会社が求めていた年代の正社員を2名採用できたほか、賃金に対して不満を持った離職者もなくなるといった成果が得られた。正当に評価されれば働く意欲も湧き従業員も成長し、結果、会社の利益にもつながる。好循環をもたらす賃上げは、この先もできる限り継続したい考えだ。

補助金や産学官連携を活用した技術開発、生産性向上の実現

中小企業が独自の技術開発部門を持つことは容易ではない。経済産業省の補助金を活用し、産学官連携による「歪み極小化熱処理技術」等の独自技術の開発を行ってきた。また、IoTによる炉の遠隔監視や受注関連業務のOA化等により、生産性向上の取り組みも進めている。さらに、現場の技術者が培ってきた技術を次世代にどう継承していくのか、新たな課題も見えてきた。

従業員やステークホルダー、地域の信頼感が最も大切

同社には労働組合がないため、滝澤社長(令和4年12月取材当時、現在は会長)自らが年2回全従業員との個別面談を行い、従業員からの本音の声に耳を傾けている。プライベートなことまで相談されることもあり、社長と従業員との信頼関係は厚く、コミュニケーションもうまくとれている。
「従業員、取引先やステークホルダー、そして地域と共存することが会社にとって一番大切。決して信頼を裏切るようなことがあってはならない。信頼関係の構築が結果として会社を強くしていってくれる」と語る。
社会情勢が厳しさを増している昨今、生産性を上げる施策やオリジナルのセンサー開発でコストダウンを図るなど、身の丈に合った創意工夫で賃上げの継続にチャレンジしている。

従業員の声

総務部 次長 湯本さん(品質管理、庶務等を担当)
 賃金の引上げは非常にありがたく感じており、昨今の物価上昇で生活も厳しい状況なので助かっています。やはり賃金が上がらないよりは上がった方がモチベーションも上がりますし、モチベーションが上がることで仕事もはかどると思います。今は仕事もプライベートの面でも充実しています。