賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 07
賃上げ取り組み事例

株式会社みちのりホールディングス

交通・観光事業の持株会社

2023/2/28

収益性の改善を背景に、その一部を社員の賃金に還元
グループ内の評価制度の共有化に取り組み、定期昇給率を引き上げ

傘下に、岩手県北バス・福島交通・会津バス・関東自動車・茨城交通・湘南モノレール・みちのりトラベルジャパンを有する交通・観光事業の持株会社。2022年3月に佐渡汽船を加え、グループ全体で各地域の交通・観光事業の再生と成長に取り組んでいる。

company 企業データ
  • ●代表取締役グループCEO:松本順
  • ●本社所在地:東京都千代田区丸の内一丁目9番2号 グラントウキョウサウスタワー8階
  • ●従業員数:5,600人*グループ8社合計(2022年3月現在)
  • ●設立:2009年3月16日
  • ●資本金:3億円、資本剰余金13.5億円(2010年4月1日)
  • ●事業内容:交通・観光事業の持株会社
company

従業員の確保、モチベーションアップのために賃上げを実施

地方からの若い人材の流出は、同社の人材確保をより難しいものにしている。とくに労働集約型産業である公共交通は、人なくして成立しない事業であることから、同社グループでは、生産性向上を通じて労働分配の強化に尽力。優れた人材の確保を目指して、グループ全8社の人事評価制度の共有化に取り組み、これに基づき定期昇給率を引き上げ、2〜3%の昇給率を実現した。「共に働く社員やその家族の幸せのために精進し力を尽くす」というグループ共通方針のもと、さまざまな取り組みにチャレンジを続けることでグループ全体の収益は、この厳しい事業環境のなか微増ながら上がっている(新型コロナ感染症の影響を除く)。こうした生産性向上の好循環が社員のモチベーションアップに繋がっている。

IT設備投資から営業活動まで様々な取り組みを実施

同社グループでは、主力事業である公共交通を中心に、バスルートやダイヤの改善、マーケティングの工夫、さらに貨客混載バスの導入など、様々な取組みにより収益性を改善し、これを賃金に還元している。しかしながら、人口減少がそのまま利用者減少に繋がる地方都市の公共交通事業者の前には、利用者獲得という大きな課題が常に立ちはだかってくる。そこで同社では、設備投資を積極的に進める一方で利用者を創造する、地道な営業活動も推進。この両輪で課題の解決に取り組んでいる。バスの自動運転システムやバスロケーションシステム、ウエアラブル端末による運転士の健康モニタリング、キャシュレス決済、Wi-Fi設備などデジタル化への対応をいち早く進め、業務の効率化と安全確保を優先したサービス品質の向上を図っている。その一方で、4月の入学時期には近隣学校に赴き「バスの乗り方教室」や「通学定期券の買い方」を開催する等の営業活動を行い、利用者の開拓・収益確保に積極的に取り組んでいる。茨城交通のあるエリアを例にすると高校生の人口が年々減少しているなか通学定期券の売り上げは毎年約3%増加している。

社員の離職率低下、求める人材の獲得にも成果

事業収益の増加は、賞与を通じて従業員にリターンされる。前述のような営業・マーケティング活動や、ITなどを活用した新しいサービスの導入によってお客様の利用や収益が向上すればそれが自分たちにもはね返ってくることを従業員は理解している。また、それだけでなく、職場の問題や改善策を会社に提案していく(無記名でも可)ような施策もあり、職場の風土や環境改善にも積極的に取り組んでいる。また、会社のビジョンに共感し、交通事業・観光事業の経営改革や営業企画に挑みたいという新たな人材の確保にも成果が出ている。公共交通は安全を強く要請されるサービスである以上、人材の確保が常に重要な課題となるため、このように優れた人材の確保と、人や職場環境へのリターンという循環がグループ各社の成長に繋がっている。