賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 10
賃上げ取り組み事例 -
松正工機株式会社
プラント配管、各種設備の設計・製作・設置工事
2023/3/20
デジタル化、DXで賃上げ原資を確保
松正工機株式会社は、産業ガス、石油化学プラント設備、医薬・食品関係向けサニタリー配管を得意とし、近年では医療・半導体分野の純水関連装置にも注力。3D CADを活用して、更なる生産性向上に取り組んでいる。
- 企業データ
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- ●代表取締役:松木 一博
- ●本社所在地:岡山県倉敷市
- ●従業員数:70名
- ●設立:1977年11月
- ●資本金:2000万円
- ●事業内容:プラント配管、各種設備の設計・製作・設置工事
作業の効率化、見える化で生産性をアップ
賃金引上げの原資となる取り組みは、多くの企業では「生産性向上」ではないだろうか。松正工機株式会社は、生産性向上に関する分野で活躍している中小企業として、「はばたく中小企業・小規模事業者300社(2021)」に選定された。同社の生産性向上とは、どのような取り組みなのであろうか。
同社は、ガス・水・石油など様々な流体を運ぶために使われる配管の設計・工事を主な事業内容とする。設計から製造、工事まで手掛けるため、やはり、生産性向上の鍵となるのはデジタル化・DXだ。申請書類、承認書類、報告書類などのさまざまなデータ管理や、社内外での情報共有をクラウド上で行えるシステムを導入。原価管理ソフトによって業績の見える化も推し進め、生産性を高めた。もちろん、これらのデジタル化・DXには、直接的な工事に携わる者に浸透しにくいという「壁」があったという。しかし、同社は、約30台のタブレット端末を従業員に支給して効率化を図るなど、「攻め」の姿勢で生産性向上の取り組みを推し進めてきた。
その結果、2022年8月に月の基本給を一律8,000円引き上げた。最近の物価高による従業員の負担を減らす目的もあるという。
従業員の「やる気」を後押しする社風
同社の生産性向上の秘策は設備投資だけにとどまらない。従業員の「やる気」も生産性向上の原動力だ。同社は、岡山県倉敷市に本社と工場、大阪府堺市と神奈川県大和市にもそれぞれ営業所と工場があり、年4回課長以上の幹部が集まる。その場では従業員の声を拾い上げて、働く環境の改善や健康への配慮が検討される。また、事業の性格上、多岐にわたる各種資格が必要とされるが、その取得に関わる費用は同社が負担する。取得した資格に応じて、年月をかけてきめ細かく設定してきた手当が支給されるが、これも従業員の「やる気」を後押ししている。
また、従業員同士の交流も、「やる気」を生み出す一つの要素だ。ここ最近は、新型コロナウイルスの影響もあり、従業員同士の交流を図る機会が少なくなっている。そこで、食堂を利用して不定期ながら交流の場を設けた。社長と従業員が一緒に、そうめん、豚汁、牛すじカレーなどの昼食を楽しむ。こうした和気あいあいの雰囲気作りも従業員の働く意欲の向上につながっている。
生産性向上と賃上げの好循環
生産性が向上して、賃上げの原資が生まれたら賃上げをするというのが一般的だろう。しかし同社は、「賃上げ」をも生産性向上の味方にしている。賃上げがメディアやニュースで流れれば、従業員は「うちの会社はどうなんだろう」という意識を持つ。そこで、他社より早く、上場企業並みの早さで賃上げを実行する。こうした素早い賃上げが、結果として従業員の働く意欲の向上へと結実し、更なる生産性向上に結び付く。こうして同社には、生産性向上と賃上げの好循環が生まれているのだ。
また、同社は、新卒採用を強く進めていきたいという。そのために、地元のJ2サッカーチームのスポンサーになり、高校生へのブランディングを積極的に行っている。継続的な生産性向上と賃上げの好循環のため、これからは、人への投資、従業員ファーストも大きなテーマとなっていくと松木一博社長は語る。従業員を大切にする同社の姿勢が表れていた。
従業員の声
山上寧々(やまがみ ねね)さん
経営管理部経理担当(2021年11月入社)
請求書の照合、日報などのデータをパソコンに入力する仕事をしています。会社の雰囲気はとてもいいです。社長が手作りのカレーを作ってくれたり、社員同士も和気あいあいで、仕事も丁寧に教えていただいています。去年の8月に給料が上がって、とてもうれしかったです。今、秘書検定と全商簿記1級を持っていますが、次は当社で資格手当がいただける日商簿記を取りたいと思っています。資格手当があるのはうれしいですし、資格取得のモチベーションになります。ファイナンシャルプランナーも気になっていますので、ぜひ取得し、会社の仕事に役立てられればと思っています。