賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 11
賃上げ取り組み事例 -
株式会社ポトペリー
生活雑貨の企画・製造・販売
2023/3/20
助成金活用と高付加価値商品の開発で賃上げ継続を目指す
生活雑貨の企画・製造・販売。ショップ、ECサイトでの直販のほか全国の百貨店やカタログギフト、海外企業にも商品を卸している。
- 企業データ
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- ●代表取締役社長:岡見 宏之
- ●本社所在地:東京都江東区
- ●従業員数:13名
- ●設立:2012年
- ●資本金:350万円
- ●事業内容:生活雑貨の企画・製造・販売
製造に係わるスタッフのモチベーション向上のため賃上げ
感染症の影響と原材料の高騰による事業苦戦が続く中、同社は2020年5月に陶磁器製造に従事するアルバイト・パート社員7名の時給を1,041円から1,131円に一律90円アップした。アルバイト・パート社員には子育て中の時短勤務者が多いことから、柔軟性をもたせた勤務体系をとらざるを得ず、それまで思うように賃上げができていなかったが、ある程度の専門性を求められる製造業務に見合った賃金額としたいと考え、賃上げを実施した。同社が取扱う食器はすべて自社で製造していることから、製造に係わるスタッフのモチベーションは生産性向上に直結する。今後、さらなる製造業務の効率化を目指してスタッフの専任化を考える経営者にとっては、この体制改善に対する理解を得やすくしたいという思いもあった。
また、ショップの販売管理や営業・企画を担当する正社員については、評価に基づいて一部社員の基本給を265,000円から310,000円に引き上げている。
助成金・貸付制度の活用と価格転嫁で原資を確保
同社は、賃上げを実施するため、業務改善助成金を申請。陶磁器の型をつくる機械と電気窯を購入し、それまで手作業だった型づくりを機械化、焼きを倍増する等して製造数増を効率的に実現した。
しかしながら、折からの原材料・燃料費の高騰に地代上昇が重なったことから、売上の伸び分を賃上げ原資に充てることが困難となり、2022年8月に一部商品の値上げに踏み切った。これに併せて国と江東区の資金貸付制度も活用し、賃上げ原資を確保することができた。
並行して同社は、販路拡大のための営業強化にも精力的に取り組んでいる。SNSを活用してメイドイン東京の陶磁器の魅力を発信し、増客だけでなく、大手のカタログギフトや飲料ブランドとのタイアップ実現にもつなげている。また、陶磁器メーカーからデザインを請け負うOEMの受注にも積極的に取り組み、収益アップにつなげている。
これら取り組みの効果もあって、2022年末頃から徐々に売り上げが回復。感染症対策緩和により客足が伸び、とくに海外から卸業者の来店が増えた。さらに、円安の影響を受けて海外からの受注も増加しつつある。
賃上げ継続のために、高付加価値商品の開発に取り組む
長期的な原材料費の高騰が予想される中で、小規模経営の同社が賃上げを継続していくには、業務の効率化だけでは限界がある。値上げのタイミングも難しく、とくに法人卸では価格改訂後の効果が出るまでに約1年のタイムラグが生じる。そこで同社は、単に販売数を増やすだけではなく、より付加価値の高い商品を開発する必要があると考え、異業種とのタイアップや大手からのOEM受注等、これまでの事業の枠組みを超えた取り組みを積極的に進めている。
同時に、助成金を活用し購入した新たな設備の稼働にはまだ余力があることから、当面はこの設備をフル稼働させ、商品の値上げも実施しながら賃上げの継続に取り組んでいく。直近の計画では、2023年6月以降の実施を目指している。