賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 18
賃上げ取り組み事例

とりそば下地橋

飲食業(ラーメン店)

2023/12/25

無駄のない効率的なオペレーションで賃上げを継続

業務改善助成金による緻密な設備投資計画と大幅な賃金引上げにより、大幅な生産性向上と売り上げ増を実現。2023年1月には全従業員の時給を90円アップした。

company 企業データ
  • ●代表取締役:木村友紀
  • ●本社所在地:和歌山県田辺市
  • ●従業員数:5名(パート)
  • ●設立:2021年
  • ●事業内容:飲食業(ラーメン店)
company

長期間継続して働けるモチベーションのために賃上げを実施

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する熊野本宮大社近くにあるとりそば下地橋は、周辺に飲食店がほとんどないという地元の要望も汲んで開業した。ただ、人口が少ないエリアの観光地であるがゆえに繁忙期と閑散期とでは雇用のブレが大きく、人材の取り合いになることもあった。そこで、給与をボトムアップし、長く継続的に働いてもらえるようにと2023年1月に従業員全員の時給を90円賃上げした。近隣の他社よりも賃金を高く設定したことで従業員の働くモチベーション向上だけでなく、店舗の活性化にもつながったという。90円という大幅な賃上げの裏には、厚生労働省の業務改善助成金による支援があったと、木村代表は話す。

業務改善助成金で導入した機材で生産性や業務効率がアップ

業務改善助成金は最低賃金の引上げとともに生産性向上のための設備投資を実施した時にその設備投資の費用の一部が助成されるもの。木村代表は、業務改善助成金を活用して厨房を増設し、業務用冷蔵庫、マルチスライサーを導入。
厨房の増設によって従業員の作業スペースが確保され、厨房内でのすれ違いにも作業の手を止めることがなくなり作業効率が向上した。
冷蔵庫の増設はさらに作業効率のアップにも寄与した。これまで、仕入れのために週に2、3回、新宮市まで車で往復約1時間半、田辺市まで同じく約2時間を要していたが、業務用冷蔵庫の導入により大量の在庫保管が可能になったため、仕入れ回数の削減に繋がった。その結果、往復に要する時間やガソリン代を軽減することができた。さらに、発注ミスの許されない配送業者からの仕入れも余裕のある在庫管理ができるようになった。
また、マルチスライサーの導入も作業効率の向上に威力を発揮。ネギひと束を切るのに15分を要していたが、約1分弱と大幅に短縮された。
同社による業務改善助成金の活用はこれだけにとどまらない。業務改善助成金は、賃金の引上げ額及び引き上げた人数により助成の上限額が変わる。同店は90円の引き上げを実現したため、設備の導入以外の面でも助成を受けることができた。店舗内にあった同店の券売機を店舗外に移動するとともに、業務改善助成金で券売機入れを作成。空いたスペースにテーブル席を1卓増やし、13席から15席へと増やすことができた。業務改善助成金による設備投資にあたって、作業の効率化を無駄なく進めるオペレーションも緻密に計算していることが窺える。

閑散期でも売り上げ向上を目指す

業務改善助成金を活用しての機材導入によってオペレーションの効率化、生産性の向上で売上高もアップし、今年は春・秋に賞与(給料の0.5%)も支給できたという。
従業員の生活を支え、安心して長期間働いてもらうためにも繁忙期に回転率を上げて売り上げを確保することは重要だが、閑散期の売り上げアップも意識していると木村代表は語る。利益は積極的に従業員へ還元しつつ、今後も賃上げのためにテイクアウト商品や観光地ならではのお土産など利益率の高い商品を開発したいという。さらに宿泊業への進出も準備中で、更なる売り上げ向上を目指すという。積極的な業務改善により賃上げを継続するという木村代表に期待したい。

従業員の声

栗栖 恵さん(厨房、接客)
賃上げはうれしかったです。助成金で冷蔵庫や券売機入れやマルチスライサーが入ったことで能率が上がり、今まですぐに手が回らなかった仕事も余裕を持って対応できるようになりました。これはほかの従業員も感じていることです。空いた時間でお客様を周辺の観光スポットにご案内することもあります。ここは観光地なので海外からのお客様も多く、私は海外留学の経験を生かした英会話コミュニケーションも楽しんでいます。仕事前に4歳の娘を保育園に預けて出社していますが、お給料も含め、働きやすくやりがいのある職場だということを周りの人にもアピールしています。