賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 20
賃上げ取り組み事例

ユアサ園芸

園芸用品販売業

2023/12/25

ガーデニングやフラワーアレンジメントを扱う園芸店、環境改善に取り組み賃金引き上げを実現

正社員の基本給とパート従業員の時給をそれぞれ3%賃上げ。人手の欠かせない仕事であり、人材確保に向け 、業務改善助成金を活用して雇用環境の改善を進め、働きやすく長く勤めてもらえる職場を目指す。

company 企業データ
  • ●代表取締役:湯浅永司
  • ●本社所在地:群馬県高崎市
  • ●従業員数:9人
  • ●設立:1971年
  • ●事業内容:園芸用品販売業
company

業務改善助成金が賃上げを後押し

ユアサ園芸は、ガーデニングやフラワーアレンジメントに最適な花苗・鉢花・洋ラン・生花を中心とした商品を取り揃え販売している。草木や花を愛するお客様と従業員に支えられ、設立から50年以上事業を続けてきたが、重い土や木々を扱う園芸業は従業員の負担が大きく、人材確保に苦労している。
人材確保のために、同社は以前から従業員の賃上げを検討していたが、近年の長期化する物価上昇を受け、2023年に正社員の基本給を3%引き上げた。また、賃金が最も低いパート従業員の賃金も3%引き上げた。同社には20年以上勤続して頼りになる従業員がいる。そうした従業員こそが会社の財産と考えて大切にしたいし、一人でも増やしたい。そのためには「利益を少しでも還元したいと賃上げに踏みきった」と総務の湯浅暁美さんは語る。
しかし、単年の賃上げでは長期化する物価上昇による従業員の生活不安は解消されず、継続した賃上げが必要だった。賃上げをするには利益を生み出さなければならない。そのために活用したのが業務改善助成金だった。群馬労働局の担当者に電話で相談したところ、非常に丁寧に説明してくれ、スムーズに申請することができた。これまで3回の助成金を申請した経験があり、どれもハードルが高いと感じていたが、今回で助成金のイメージが変わったという。

効果を上げている導入ソフトと導入機材

業務改善助成金で導入したのはパソコン用ソフトウェアとショベルローダー。
パソコン用ソフトウェアは生花や盛籠などに添える、贈答先や贈り主の名前を表記した立札を製作する筆耕ソフトだ。旧来のソフトは操作性や効率が悪く、従業員一人がかかりきりになる必要があり、ほかの仕事が進まないという状態になっていたが、新しいソフトは作業効率が格段に上がっただけでなく、様々なデザインを選ぶことができバラエティに富んだ札が作れるようになった。作業効率が上がったことから、立札を希望する顧客を長く待たせることもなくなり、新たな顧客も増えたという。ショベルローダーは栽培部門で育苗用の土をポット土入れ機に移す際に活躍している。土の運搬は重労働であり、従来は大量の土をスコップでポット土入れ機に移していたが、これには2日がかりということもあった。ショベルローダーによりこれが2、3時間で済むという作業効率の向上がもたらされ、何よりも作業する従業員の腰への負担が激減したことが大きかったという。更に、土の移動に費やしていた時間を手厚い商品管理に充てることができるようになり「助成金のありがたみを痛感しました」と湯浅さん。

女性の働き方も考慮しながら継続的な賃上げを

賃上げの効果として、全従業員に利益向上のためにどうしたらいいかという意欲が生まれているという。寄せ植え教室の開催やSNSを通じての販売をはじめとして、業務上の細かな部分に関する意見が多く出されるようになった。今後、同社は、向上している技術を生かし、より良い商品を生み出すなどして付加価値を高め、高騰する輸入肥料などの諸原料費を価格に転嫁するなどの取り組みを進めて業績を維持し、継続的な賃上げや賞与引き上げを目指す。
2023年の賃上げ後に1名の新規採用者を迎えることができた。同社の仕事は生花を扱うこともあり、人手が欠かせない、それだけに人が財産だという。新規採用者を含め、全従業員に賃上げだけでなく、働いていて楽しくやりがいを感じてもらえるような職場にしたいと語る湯浅さん。全従業員には有給休暇の完全消費を推奨するなど、働き方への配慮も忘れない。

従業員の声

久保由衣子さん(生花部門)
賃上げはとてもありがたく感じていますし、働くモチベーションに繋がりました。私が作ったフラワーアレンジメントがお客様に喜ばれたり、お買い上げいただいたときにやりがいを感じる仕事です。働きやすくて楽しい職場です。札を作るソフトは私が提案しました。以前とは比べものにならないくらい簡単に作れるようになって仕事の効率がぐんと上がりました。