賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 25
賃上げ取り組み事例

南九施設株式会社

造園工事、公共工事、土木工事、エクステリア工事、ガーデンリフォーム工事

2024/1/24

紙媒体の見直しによる大胆な業務効率化と助成金の活用

業務改善助成金・働き方改革推進支援助成金を活用した大胆な業務効率化の実行。
定期的な賃金引き上げの裏にある代表者の思いを探る。

company 企業データ
  • ●代表取締役:有村 光子
  • ●本社所在地:鹿児島県鹿児島市
  • ●従業員数:19名
  • ●設立:昭和60年3月
  • ●資本金:1,000万円
  • ●事業内容:造園工事、公共工事、土木工事、エクステリア工事、ガーデンリフォーム工事
company

業務効率化の足掛けと業務改善助成金

紙媒体による記録・情報共有は便利なものだ。電話があったことのメモ、自身がやるべき仕事の明確化など、我々は様々な場面で紙媒体を活用していることだろう。しかし、これを続けていくことが真の効率化につながるだろうか。

―――「このやり方は効率的じゃない。もっと改善しなきゃ。」
個人邸の外構工事の設計・施工を請け負う南九施設株式会社の有村代表はこう語る。同社では、経理のシステム化を皮切りに、紙媒体や手書きによる情報共有の方法を改めることとした。手始めに、生産性向上のための設備投資を支援する業務改善助成金を活用し、手書きの紙媒体で管理していた顧客管理を電子化した。相談のあった顧客が契約につながった場合、相談時における顧客の要望などの確認作業が生じる。紙媒体では記録が容易であるが、こういった確認作業には迅速な検索ができず不向きだ。有村代表はまずはこの作業を電子化すべく、近場のプログラミング会社とも協議し、システムを開発。顧客管理情報を電子化し、作業を効率化。業務改善助成金による支援もあいまって、時給制の従業員の賃金を60円引き上げるに至った。

大胆な業務改革にあった労働局の助成金による支援

有村代表の改革はこれにとどまらなかった。大幅な効率化を目指した有村代表が目を付けたのは「ホワイトボード」。同社では、設計及び現場の作業管理を事務所のホワイトボードで行っていた。存在感のあるホワイトボードに進捗を書き込むことは、簡易かつ直感的でわかりやすい。建設業界でも一般的に行われている手法だ。しかし反面、現場作業員が事務所に書きに来なければならず、また進捗遅れによる書き直しなど、非効率な部分があった。さらにこれが長時間労働を生む原因となっていたことから、働き方改革推進支援助成金を活用し、この作業を効率化することとした。
有村代表は、先述のプログラミング会社と早速協議を開始。「いまやっていることをそのまま電子化してほしい。」有村代表が伝えたこの言葉には、「電子化が苦手な従業員もいる。できる限りその従業員でもわかるような仕組みにしたい。」という思いが表れている。見事ホワイトボードの電子化を達成した同社は、進捗を現場から直接記入できるようになるなどの効率化を達成。現場作業員が直帰できるだけでなく、ホワイトボードを協力会社も確認・編集できるような仕組みとしたため、電話業務もぐっと減ったという。先述の顧客管理システムも含め、これらのシステム開発費は高額であっただろう。「労働局の助成金で支援を受けられなかったら、こんな理想的なことはできなかった。」有村代表から安堵した声が漏れた。

業務効率化や生き生きとした従業員の裏にある代表者の思い

こういった生産性向上のための取組で、同社は新たな取り組みを始めることができた。業務効率化のきっかけとなった経理業務のシステム化により、経理事務の担当者の手が空いたことから、マーケティングやデジタル化に伴って蓄積されたデータを分析し、経営戦略に活かせる業務を担うことができている。業務改善助成金も、経理業務のシステム化による隙間時間で見つけられたという。
同社は、向上した売り上げを、賞与もさることながら、定期昇給という形で従業員に還元している。その背景には、2018年7月9日、モデルガーデン併設の事務所移転に伴い、THE EDGE OF ARTというエンドユーザー向けのブランディングを立ち上げ、売り上げを伸ばすことに成功したというのがあるようだ。
また、有村代表は目先の賃金引き上げのみならず、従業員の将来にも心を配る。同社は数年前にiDeCoプラスを導入。従業員に源泉徴収票を見せながら節税額や将来もらえる金額を説明したところ、従業員は将来のお金のことを考えるようになった。今では従業員同士で様々な投資の話がなされるなど、社内のコミュニケーションも活性化した。
賃金引き上げも業務効率化も将来のお金の話も、従業員にとっては喜ばしいことだ。この原動力はどこから来ているのだろうか。「社員の皆の努力のおかげで会社が成り立っている。だからそれに対してお返しをしたい。」そう語った有村代表のそばで、生き生きと働いている従業員の声が聞こえた。

従業員の声

肥前さん(チーフプランナー)
社長から給料が引き上がると聞いてとてもうれしかったです。導入してくれた顧客管理システムも、手入力の手間などがなくなり、とても使い勝手が良いです。社長は、社員のお金のことに気を掛けてくれていて、投資の話をしてくれるなどマネーリテラシーが育まれていると思います。

上妻さん(プランナー)
転職して現在働いていますが、生じた問題に対して社長・社員の垣根を越えて解決策を一緒に考えていくことができ、働きやすい会社です。業務の効率化が図られ、会社の雰囲気もよいことから、もう他の会社では働けないと思います。