賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 26
賃上げ取り組み事例 -
株式会社河宗
畜産資材・畜産機械設備施工・農業資材、一般資材・建設資材・高圧ホース加工、ビニールシート縫製加工・特殊裁断加工、畜舎建築及び一般建築一式工事
2024/1/24
補助金と助成金で作業効率と利益率を向上
大型サイズのビニールシート加工や複雑なデザイン、立体加工を得意とする「河宗」。建築・土木・畜産業界で使用されるシート製品だけでなく、オリジナル製品のデザイン設計から製造加工まで手がける。2022年には宮崎県の補助金、厚労省の助成金を活用してソフトウェア、機材を導入し、生産性と利益率を向上させ、パート・アルバイト、正社員の賃上げに結び付けている。
- 企業データ
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- ●代表取締役:河野芳輝
- ●本社所在地:宮崎県都城市
- ●従業員数:43名
- ●設立:1976年(創業1953年)
- ●資本金:1,000万円
- ●事業内容:畜産資材・畜産機械設備施工・農業資材、一般資材・建設資材・高圧ホース加工、ビニールシート縫製加工・特殊裁断加工、畜舎建築及び一般建築一式工事
6時間勤務で従業員に自主性が生まれた
同社の契約上の勤務時間は8時間(休憩1時間)だが、コロナ禍だった2020年、給与はこれまでの8時間分のまま午前9時から午後3時までの6時間勤務(休憩1時間)へと思い切って変更した。これによって従業員の主体的に働く意欲が高まったという。従業員同士で自主的に休憩時間のシフトを組んだり、自分の作業を終えた従業員が他のチームの手伝いをしたりするなど、午後3時の終業に向けて積極的に作業の効率化へ取り組むようになった。生産性についても、従前の生産量を維持するどころか、なんと1.5倍にも達した時期もあったそうだ。作業が立て込むときは契約どおりの8時間勤務になる場合もあるそうだが、効率的に作業を進めることによって8時間を超える時間外労働はほぼゼロだという。
宮崎県と厚労省の連携で実現したシステム
このような生産性向上の取組が功を奏し、同社の業績はコロナ禍にあっても堅調に推移していたこともあり、2022年10月にパート・アルバイトの時給を平均25円引き上げ、さらに、2023年6月には、5月末の決算状況に鑑みて、正社員の基本給を平均1.9%引き上げた。
会社のために自ら考え行動してくれる従業員に報いるため、継続的な賃上げは必須だ。同社は、更なる生産性・利益率の向上を目指し、生産管理のための基幹システム、業務システム、これらを稼働させるサーバーを導入した。導入に当たって活用したのが、宮崎県のICT導入支援事業費補助金と厚生労働省の業務改善助成金だ。このシステムによって、生産工程、出荷、売上、機械の点検など、従来は紙面でやりとりしていたすべての作業は、サーバーを介して端末やパソコンでモニタリングすることが可能となり、作業効率は飛躍的に向上した。日報の作成を含め、すべての工程をオンタイムで記録でき、従前より実施してきた効率的な働き方にも多大な効果を生んでいる。
同社は、このシステムの導入に当たって、システムの構築をICT導入支援事業費補助金で、システムを利用するために必要なPCなどの端末を業務改善助成金で賄っており、複数の補助金・助成金を組み合わせて高い相乗効果が得られている点が大変興味深い事例だ。「宮崎県と厚労省からのアドバイスで現在のシステムが完成した。従業員それぞれが本来の業務に集中することが可能となって生産性向上に繋がり、賃上げへの大きなパワーになっている」と河野社長は語る。
利益率を向上させ続けることで継続的な賃上げを
コロナ禍以降、同社の売上は落ちているが、一方で利益率は上がっている。継続的な賃上げについて河野社長は「利益をどれだけ上げられるか。売上高にこだわらず、利益率を高めることが重要だ」と語る。現場の従業員がコストを下げる努力をする。それにより得られた利益は給与に上乗せすることが誠意ある対応だという。同社の見積もりは高いと言われているが、河野社長は下げることは考えていない。年商が上がっても利益が伴っていなければ従業員に対して誠意ある還元はできないからだ。従業員に同社の誠意が伝わり、それがよりよい信頼関係の醸成に繋がれば嬉しいと河野社長は語ってくれた。