賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 29
賃上げ取り組み事例 -
株式会社甘節庵
和菓子(餅菓子)製造、小売業
2024/1/24
大ヒット商品を背景に、将来を見据えた賃上げを
地元企業とのコラボで生まれたヒット商品を原資に、2022年に正社員の基本給を15%、パート・アルバイト従業員は時給955円から1,000円にアップ。業務改善助成金で新包装機を導入して生産性を向上させ、利益を還元しながら継続した賃上げに備えている。
- 企業データ
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- ●代表取締役:稲葉憲辰
- ●本社所在地:愛知県常滑市
- ●従業員数:35名(正社員6名、パート・アルバイト29名)
- ●設立:1951年
- ●資本金:300万円
- ●事業内容:和菓子(餅菓子)製造、小売業
大ヒット商品が昨年の賃上げの大きな原資に
豊かな知多半島の食材をふんだんに使ったお餅の専門店「大蔵餅」を運営する『株式会社 甘節庵』。2022年、地元企業とコラボして販売した『トイレの最中(さいちゅう)』というもなかが大ヒットし、売り上げが30~40%もアップした。これを原資に、昨年8月には正社員の基本給を15%アップし、パート・アルバイトの最低賃金を955円から1,000円にアップした。また、それぞれ年3回のボーナス(6カ月分)も支給した。「責任あるポジションとして正社員が必要なのですが人が集まらなかった。その理由は賃金にもあると判断して正社員の基本給を上げました」と三代目の稲葉社長。さらに先行投資として、2023年は正社員とパートを2人ずつ増やした。
新包装機導入で生産性と利益率を向上
ヒット商品にも恵まれて賃上げはできたが、常に不足している人材確保に対応するには継続した賃上げは不可欠だ。そのためには業務の効率化を図り、利益率向上を目指す体制作りが必要となる。そこで同社は、業務改善助成金を活用して製品を個包装する自動包装機を導入した。導入前は1台の包装機しかなかったので故障時には製品が作れないというリスクがあった。また、一度にひとつの製品しか包装できなかったので効率も悪かった。新包装機の導入によって2台体制となり、並行して異なった商品が包装できるため30%以上の生産性向上が図れたという。製造数の増大はもちろん、時間外労働も削減でき、利益率向上に大きく貢献している。助成金による新包装機導入は「賃上げの大きな原資にも繋がり、ありがたかった」と稲葉社長は語る。
会社という道具を使って、みんなが幸せに
継続した賃上げのためには利益を上げ続けなければならない。そのための環境は、将来のビジョンも含め会社が整える。従業員がそれをどう生かしてくれるかがポイントと稲葉社長。昨年の賃上げの成果として見えてきたのは、どうしたら利益が上げられるかと考える意欲が従業員の中に高まってきたことだ。仕事への積極性や自主的な行動が生まれ、新商品のアイデアなども出されているという。「会社という道具を使って、みんなが幸せになる」というのが稲葉社長のポリシー。好調な売り上げが続く『トイレの最中(さいちゅう)』も、新たな販売戦略が進んでいるという。規模は小さいが、利益は従業員に還元しながら大手にはできない生産性と収益性の高い企業を着実に目指している。
従業員の声
加藤 翼さん(製餡部)
正社員3年目。賃上げはうれしかったですよ。新しい包装機に直接触れることはないですが製造の効率は上がっていますね。社長が柔軟な発想を持っているのでいろいろなアイデアを提供してくれます。職場も働きやすく、こういう会社にいられるのは幸せだと感じています。