賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 33
賃上げ取り組み事例 -
株式会社ゆめの樹
洋菓子の製造・販売
2024/2/13
助成金の活用で導入した機材による賃上げのサクセスストーリー
雑誌社が主催する「ふるさとグランプリ2023年 菓子部門」で金賞を獲得した話題の店。金賞獲得の裏にあった業務改善助成金で導入した機材と、この機材による生産性向上の達成、賃上げと人材確保のストーリーに迫る。
- 企業データ
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- ●代表取締役:宮村 充
- ●本社所在地:熊本県八代市
- ●従業員数:12名
- ●設立:2005年
- ●資本金:300万円
- ●事業内容:洋菓子の製造・販売
業務改善助成金活用で生産性が向上、さらに時給をアップ
「ふるさとグランプリ2023年 菓子部門」で金賞を受賞した「匠チーズケーキ」。ここ熊本県八代市の株式会社ゆめの樹で製造されている洋菓子だ。実は、この受賞の裏には、従業員の賃金引き上げと助成金による設備投資への支援があったという。そのストーリーはどのようなものだったのだろうか。
同社は、2022年9月にパート・アルバイト5名の時給を5.5%引き上げた。正社員については、「将来にも目を向けてもらいたい、長く働いてもらいたい」ということも込め、加盟している中小企業退職金制度の掛け金を平均20%引き上げた。これは、正社員に賃上げと同制度のどちらがよいかと打診した結果、全員が同制度を選択した結果だ。これらの原資となったのは、2022年11月末に業務改善助成金を活用して導入したシュリンクパッカー(熱収縮包装機)だった。
同社は、ケーキや焼き菓子などを製造・販売している。洋菓子の賞味期限はどうしても早いものであるが、シュリンクパッカーの導入により、今まで常温保存しかできなかったものが長期の冷凍保存ができるようになった。さらに、賞味期限が延びただけでなく、破棄処分も減り、詰め合わせの焼き菓子についてはゼロになったという。この取り組みにより、1カ月で約10万円ものコスト削減にも結びついた。「もっとも大きかったのは生産性が上がったこと。手のあいたときに大量に作って冷凍保存できるうえ、計画的な製造ができ、売れ残りのない在庫管理もできるようになった」と宮村社長は語る。
シュリンクパッカーのサクセスストーリー、そしてIT導入補助金の活用
シュリンクパッカー導入の恩恵はまだあった。導入を知った八代市が、同社の製品を全国発送できると考え、『匠チーズケーキ』をふるさと納税の返礼品とした。地元に愛されていた『匠チーズケーキ』は瞬く間に全国にヒット。雑誌社の「ふるさとグランプリ2023年 菓子部門」での金賞受賞にまで繋がった。なお、ヒットしたことによる売り上げは従業員へ還元された。
また、同社ではIT導入補助金の活用でPOSレジと連動した顧客管理システムも導入している。一般的なレジの機能に加え、同社のアプリ会員になれば顧客はオンラインでの注文が可能になり、ポイントも付与される。同社では、売り上げ情報、予約情報、購入履歴などがリアルタイムに把握でき、顧客管理とともに効率的な生産計画や販売計画を立てることができる。また、タブレット端末とも連動し、店内であればレジから離れていても精算ができるためスムーズでストレスのない接客にも寄与している。
利益還元で継続的な賃上げを
同社では、こうした賃金引き上げや生産性向上の取り組みにより、2023年11月と2024年4月に正社員がそれぞれ入社、入社予定となっている。「原資がなければ賃上げもできない。努力すれば利益も上がり賃上げに繋がることを従業員は知っている」と宮村社長。物価高が続く今、従業員の暮らしのためにも賃上げは続けていきたい。無駄と思われる固定費を削減し、売り上げが伸びて確保した利益を還元するのは経営者の責任とも。「従業員はそれぞれが自分の役割に責任を持って仕事をしている。10年も務めているパートさんたちもいる。店を支えてくれている人たちに誠意を示したい」と、日頃のスタッフへの想いが伝わってくる。
従業員の声
上田亜由美さん
賃上げはうれしかったです。接客だけでなくシュリンクパッカーの操作も担当しています。導入されてから詰め合わせのパッケージが150箱も冷凍保存できるようになり、在庫管理が効率よくなりました。廃棄もほとんどありません。働きやすい職場なので長く勤めたいと思っています。
濱田妃美香さん
中小企業退職金制度の掛け金20%アップは、将来のことを考えると心強いです。長く働ける環境を整えていただいて感謝しています。シュリンクパッカーが導入される前は注文ごとに包装していたのですが、今は解凍したパッケージをすぐに提供できるので接客に集中できるようになりました。スムーズな対応ができていますよ。