賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 36
賃上げ取り組み事例 -
りのはワークス株式会社
コンプライアンス研修、外部通報窓口の受託サービス、法律事務所事務局運営受託サービス
2024/3/29
賃金引き上げと労働環境の整備で社員の定着を図る
法律事務所の関連法人としてコンプライアンス研修やハラスメント相談窓口の受託などの事業を実施しているりのはワークス。2023年2月、正社員の基本給を9%アップ。業務改善助成金でWeb会議機器を導入。法律事務所との連係がスムーズとなり、業務効率化を実現。
- 企業データ
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- ●代表取締役:塙 厚夫
- ●本社所在地:東京都港区
- ●従業員数:4名
- ●設立:2021年
- ●資本金:800万円
- ●事業内容:コンプライアンス研修、外部通報窓口の受託サービス、法律事務所事務局運営受託サービス
ハラスメント相談窓口を気軽に活用してもらうため法律事務所から独立して設立
2020年に『改正労働施策総合推進法』が施行され、2022年4月から中小企業を含む全企業において職場のパワーハラスメント防止措置が義務化され、中小企業でもパワーハラスメントに関する相談窓口の設置が法律上要請されることとなったため、中小企業法務を主な業務とする弁護士・塙創平さんのもとに相談窓口の設置に関する問い合わせが一気に増えた。ただ、相談窓口において弁護士が対応するとなると、どうしても高い単価で受けざるを得ない。そこで、安価でハラスメント相談業務を受託できるように、「りのは綜合法律事務所」から独立するかたちで設立したのが、りのはワークス株式会社だ。社員は人事担当の塙さんを除いて計4名。法律事務所からの移籍が2名、新規で中途採用した2名だ。
「ハラスメントの相談窓口とは、通報や相談の受付を、外部相談窓口としてお客様の会社に代わって行うもの。社員には、弊社サービスを利用する会社で働く労働者からの相談対応業務に携わってもらっています。法律事務ではないので法曹資格こそ不要ですが、困っている方の第一声をお預かりする、非常にセンシティブな仕事になります」と塙さん。社員には、相談者に寄り添い共感することで安心して話をしてもらえるように対応すること、また、相談者が話した内容を正確に聞き取るという専門的なスキルが求められる。「相談対応というものは、かなり対応者の精神をすり減らす、大変な業務です。今回の賃上げは、そのような業務に的確に対応してくれている社員の雇用を可能な限り継続するためというねらいがあります」と塙さんは語る。
業務改善助成金を活用し業務効率化と賃上げを一挙に解決
りのはワークスの人事を担当する塙さんは会社設立当初から「給与水準を上げていかないと今後、優秀な人材からの応募が減ってしまうし、定着してくれないのではないか。」と考え、賃金引き上げを検討していた。肝心の原資をどうするかが大きな問題だったが、そこで活用することにしたのが業務改善助成金だ。企業法務だけでなく企業が利用する補助金や助成金にも詳しい社員からの提案がきっかけだった。業務改善助成金であれば、創業間もないため相談対応に応じるための設備投資が十分でない状況と賃上げを一挙に解決できると考えた。
これにより、2023年2月、社員の基本給を9%アップした。前年は3%だっただけに、これだけアップできたのは助成金があったからだ。「助成金を活用したおかげで、時給換算にして100円アップすることができました。賃金の引き上げは継続することも大事だったので、100円アップはかなり勇気のいる判断でしたが、助成金が良いきっかけになりました。」と塙さん。
では、業務改善助成金によって実施した設備投資はどのようなものだったのだろうか。「以前から欲しかったWeb会議システムを購入しました。個々の相談事案に連係して対応する法律事務所との意思疎通がスムーズになり、また、顧客との打ち合わせに出向く回数も減りました。かなり業務効率化に役立っています」。社員の働く意欲の向上や定着率のアップにつながるのではと賃上げの効果に期待を寄せる。
社員に長く働いてもらうためには給与水準だけでは足りない
りのはワークスのハラスメント相談受託業務サービスは、弁護士事務所から独立したということもあり、法律の正確な知識を踏まえた緻密な対応が特色だ。しかし、個々の相談対応においては知識もさることながら、数多くの相談をこなしてきた経験が何よりも重要だという。「相談対応の経験値の豊富な相談員を育成するには膨大な時間がかかります。だから、辞めないで長く働いてほしいのです」と塙さん。そのために給与だけでなく、労働環境の整備も不可欠だという。フレキシブルな労働時間制、年次有給休暇等の各種休暇制度を取りやすくし、社員の希望に沿った働き方が可能となるよう配慮している。「給与水準は今後も引き上げていきながら、労働環境の面でも他社の見本になるような会社にしていきたいですね」(塙さん)