賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 40
賃上げ取り組み事例 -
株式会社MONSTER DIVE
Webサイト制作・システムインテグレーション、映像制作・ライブ配信・レンタルスタジオ、Web開発・運営
2024/3/29
ものづくりのプロフェッショナルである “モンスター”への利益の還元
Webサイトや映像の制作を行っている株式会社MONSTER DIVEは2023年4月、全従業員34名の賃金を一律1万5,000円ベースアップすることを決定。従業員を“モンスター”と呼ぶ会社の社長が語った、働く“モンスター”への思いとは。
- 企業データ
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- ●代表取締役:岡島 将人
- ●本社所在地:東京都港区
- ●従業員数:35名
- ●設立:2009年4月
- ●資本金:2,510万円
- ●事業内容:Webサイト制作・システムインテグレーション、映像制作・ライブ配信・レンタルスタジオ、Web開発・運営
ものづくりを手がける“モンスター”たちが最大の経営資源
Webと映像のプロダクション・カンパニーである株式会社MONSTER DIVE。2009年の創業以来、「職人的なこだわりと、オタク的な探究心」をスローガンに掲げている。デザイナー、Webエンジニア、映像クリエイター、プロデユーサー、ディレクターなど、デジタル領域に関する多様な職種が集っており、こうしたプロフェッショナルたちを同社では“モンスター”と呼んでいる。非正規雇用やパート・アルバイト採用は原則行っておらず、スタッフ全員が正社員だ。その全社員を対象に2023年4月、給与月額を一律1万5,000円ベースアップした。岡島社長は創業当時から、平均給与が高い会社にしたいという思いがあったという。給与が高いことにより、集中してパフォーマンスを発揮できるからである。「それと何より弊社においては、社員こそが経営資源という思いがあります。歴史的な物価高騰が続く中においても、社員の生活を維持・向上させ、安心して働ける職場環境を目指し、賃金ベースアップを実施しました」と岡島社長は語る。
個人の貢献度による昇給で岡島社長は何を見るか
会社の利益を原資にして、2023年4月のベースアップはかなり思い切った金額だったが、今回の賃上げに際し、直接的な単価調整や価格転嫁は行わなかった。より一層、製作工程の精査に努めてコストを削減、また、成果物のさらなる品質向上を目指すことで料金の適正化を図っているそうだ。
毎年4月は事業概況や個人の貢献度に基づいて定期給与を改定実施のタイミングでもある。つまり、昇級とは別に1万5,000円アップしているので、実質的に2~3万円アップした社員もいる。「給与は成績表のようなもの。スキルアップすれば、その分、対価も上がるという仕組みがあれば、社員も『この会社はきちんと評価してくれるし、給与もアップする』と考えてくれ、気持ちよく仕事を頑張ってくれると思うのです。」と岡島社長。評価の基準として成果物もあるが、プロジェクトのプロセスも重視しているという。「クライアントの要望をきちんと組み取って適切な対応ができているか、また、クライアントはもちろん、同じチームの仲間とのコミュニケーションがうまくいっているか、なども評価の対象としています」。
社員の生活維持・向上にとどまらない賃上げへの思い
2024年のはじめ、岡島社長は「毎年、給与はベースアップする」と社員に宣言したという。「事業部ごとになりますが、かなりのパーセンテージで考えています」。なぜそこまでするか。ちょうど今年、設立15周年を迎え、MONSTER DIVEとして今後のどのような展開をしていくかが問われる段階にあるととらえているからだ。「クライアントに価格転嫁を行わず、僕らがいかに生産性を上げるか、もしくは無駄になっている生産コストをどう省くかをみんなで考え、売上げを伸ばしていく。そのために、一定の給与額を毎年上げると宣言することでこちらの覚悟を伝えて安心してもらい、仕事に集中してほしい。そうすれば自ずから生産性は上がる」と考えている。岡島社長は終身雇用という制度に魅力を感じている。「おそらく物理的な時間として長く一緒に働いている方が生産性を含め、プラスになることが多い。長く働いてくれる社員が多い方が会社も成長すると思うからです」。
ちなみに、23年4月のベースアップ以降、離職率はかなり低く抑えられている。また、「毎年給与のベースアップがあり、社員に利益を分配していく姿勢」がブランディングになっており、採用にも効果が出始めているところだ。
従業員の声
西島静子さん(コーポレート室 バックオフィス担当)
手取額として目に見える形で給与が上がったのは本当にありがたいと社員同士で話しています。
清水貴規さん(コーポレート室 採用・広報担当)
この1年で物価が高騰し続け、社会情勢が非常に厳しくなった。もし、ベースアップしていなければ、生活苦で、この業界を辞めざるを得ないと考える社員もいたかもしれない。でも、幸い離職というのは抑えられたと思います。