賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 46
賃上げ取り組み事例

株式会社オカムラ

オフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業

2024/3/29

働きがい改革により生産性を向上し、賃上げ継続につなげる

オフィス家具・店舗什器で国内シェアトップを誇るオカムラ。「人が活きる社会の実現」を目指す同社に、社員の処遇について話を聞いた。

company 企業データ
  • ●代表取締役 社長執行役員:中村 雅行
  • ●本社所在地:神奈川県横浜市西区
  • ●従業員数:3844名、連結5492名(2023年3月現在)
  • ●設立:1945年
  • ●資本金:186億7,000万円
  • ●事業内容:オフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業
company

若年層の昇給スピードを上げ、中堅層にメリハリある昇給へ

リモートワークの導入をきっかけに、オフィスの省スペース化や省人化、移転、フリーアドレス化など、改めてオフィスのあり方を見直す企業が増加したと聞く。コロナ禍以降、働き方とオフィス環境に対する世の中の常識は大きく変化した。また一方では、通信販売がより身近になったことから商環境も変化している。オフィス環境事業・商環境事業・物流システム事業を展開するオカムラ。「人が活きる社会の実現」を掲げ、多くの人と企業に快適環境を提案する同社に、近年の社員の処遇について話を聞いた。
同社は、2022年4月に新人事制度を導入。若年層(18〜35歳)の昇格昇給額を5割増とし、昇給スピードを高めた。また、昇給テーブルを再設計し人事評価の際の若年層の昇給額を引き上げるとともに、中堅層は、貢献度に応じたメリハリある処遇を実現した。これに加えて、ベースアップも実施。一律8,000円、成果配分2,000円のトータル1万円とし、初任給にも反映した。非正規社員についても正社員の賃上げにあわせて時給を上げた。その結果、同社全体で定期昇給額とベア額だけでも前年比5.3%の賃上げとなった。
新人事制度の導入に当たっては、昇格基準を公開した。これは、長年の労使の共通課題であった昇格基準の透明性の確保を狙ったものだ。

働き方改革から、働きがい改革へ

賃上げを継続するために特別な取り組みをするのではなく、生産性を向上し、利益率を上げることが賃上げの継続につながると考える同社は、2017年頃から働き方改革をプロジェクトとしてスタートさせた。「人が活きる社会の実現」を目指し、働き方を提案する側に立つ同社。ここでいう「人」には、もちろん自社で働く社員も含まれる。そうした考えに基づき、自社の働く環境の改革を実現する「WiL-BE」活動を推進。「働き方改革から、働きがい改革へ」を合言葉に、各部署間のコミュニケーションを密にとりながら、拠点ごとに「人が活きる環境づくり」を目指してオフィスの改装やさまざまな施策の実施を進めてきた。並行してDX推進の強化についても全社的な重点課題として取り組み、生産性の向上を目指している。製品・サービスに対する事業としてのDXと社内業務改善のためのDX、さらには経営管理の高度化を目指すDXと多面的に取り組み、全社員を対象としたDX教育も継続して実施している。その積極的な取り組みが認められ、同社は国から「DX認定」を受けている。

市場ニーズの変化を先取りした製品開発を推進

業績が好調であった2023年度は、ベースアップによる基本給の引き上げや成果配分による賞与で還元をすることができた。
しかしながら、物価高騰に対応する賃上げの実施は、社員の生活維持のためにも継続していく必要があると同社は考える。今後業績が厳しくなった際にも賃上げを継続するためには、社会や市場ニーズの変化を先取りした製品・サービスの開発や、新たな事業モデルの構築を進めることが重要になってくる。同社には、創業以来脈々と受け継がれている「ものづくり」の精神がある。「オフィス家具のオカムラ」の印象が強いが、飛行機の技術者たちによって創業しており、当時はスチールデスク・イスの製造と並行して、日本初のFFオートマチック車や飛行機の生産も行なっていた。社会の変化に柔軟に対応しながら、時代にマッチした高品質な製品を提供する、まさに同社のミッションである「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」ことで、社員の一人一人が活き活きと活躍できる環境を創っていく。