賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 50
賃上げ取り組み事例 -
ブルドックソース株式会社
ソース・その他調味料の製造・販売
2024/3/29
シニア社員の活用を目的とした大胆な制度を導入
さらに、10数年ぶりとなるベースアップも実施
少数精鋭組織が生産性向上を目指して導入した「シニア社員制度」。従業員のモチベーション維持・向上のための取り組みとは。
- 企業データ
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- ●代表取締役 社長執行役員:石垣 幸俊
- ●本社所在地:東京都中央区
- ●従業員数:223名
- ●設立:1926年9月
- ●資本金:10億4,437万円
- ●事業内容:ソース・その他調味料の製造・販売
新制度導入に加えてベースアップを実施
ブルドッグ犬のトレードマーク。日本人なら知らない人がいないといってよいほど印象的なこのマークは、ウスターソース発祥の国であるイギリスの国犬がブルドッグであることに由来しているという。同社の設立年は、ブルドックソース食品になった1926年としているが、創業は今から120年以上も遡り、1902年に創業し、1905年にソースの製造・販売を開始している。
同社は、2023年4月にベースアップを実施した。これは、物価上昇に対応するもので、ベースアップを行ったのは10数年ぶりとのことだ。従業員の生活の安定を図ることを目的として実施したという。これに加えて、一時金という名目でパート社員を含む全従業員に一律5万円の特別賞与を支給している。
同社は、本ベースアップに先駆けて、2021年4月に新しい人事制度としてシニア社員制度を導入している。60歳の定年退職を迎えた後、70歳までの10年間、継続して雇用するというものである。この「シニア社員制度」では、従来の再雇用制度を見直し、再雇用社員に対しても査定昇給や賞与支給を行うために業績評価を行なうこととし、再雇用社員のモチベーション向上につなげている。これは、2021年に改正された高齢者雇用安定法への対応だけでなく、社員からの「65歳を超えてからも働きたい」との声に応えたもので、従来の1年ごとの雇用契約ではなく10年間にわたって継続的に雇用する取り組みだ。導入初年度はすでに再雇用されている社員も合わせて12人が対象となり、以降毎年3〜7人ずつシニア社員が増えていく。
少数精鋭で生産性の向上に取り組む
同社の従業員数は、本社、栃木の関東支店、札幌・仙台・新潟・名古屋・大阪・広島・福岡と全国に展開する支店・営業所と、さらに館林工場もすべて合わせて249人と少数だ。これは、営業部門と生産部門、パート社員を含んでの人数だ。同社は、このような少数精鋭組織でさらなる生産性の向上を目指すには、従業員の意識改革が必要だとかねてから考えており、特に今後増加するシニア層にはより意欲的に活躍してもらいたいという思いがあった。「シニア社員制度」導入のねらいは、まさにそこにあった。旧制度では業績評価を行わず、賞与もなかったため、シニア社員のモチベーションの維持が難しい側面があったが、評価に応じて処遇が変わることで、シニア社員の仕事に対するマインドに前向きな変化が生じ、各部門において生産性の向上につながっているという。将来的には、シニア社員向けの仕事を生み出したいという。
また、新制度では定年退職日を年度末に統一し、再雇用の開始を4月とした。これは、期中で担当業務が変わってしまうと目標管理の継続性が保ちにくくなってしまうという課題を解消し、部門内メンバー全員が足並みを揃えて事業目標達成へのスタートを切れるようにするものだ。
人財が資本の意識で賃上げ継続を目指す
「ベースアップの実施に対して就活生も敏感に反応しているのを実感している」と総務人事部の新開部長は語る。「本ベースアップには、優秀な人材に来てもらいたいというメッセージも込めています。理系の学生や研究職のスキルを持つ専門人財、業務用食品に特化した営業スキルを持つ経験者など、優秀な人材を獲得するには、当然のことながら給与は重要なポイントとして捉えられます。人が資本の意識を持って、これに応えるためにも賃上げを継続できるように取り組んでいきたい」。
現在、食品業界を取り巻く環境は大きく変化している。少子高齢化により国内需要が縮小し、さらには食の嗜好変化によりニーズが多様化している。こうした激しい環境変化の中においても持続的に成長していかなければ、賃上げの継続は実現できない。そこで同社は、食の環境変化への対応としてソース以外の新商品の開発を進めてきた。すでに販売しているお好み焼きやもんじゃ焼きの材料セットに加えて、ドレッシングやたれ等、さらなるラインナップの増加を目指す。また国内では業務用商品の売上拡大にも積極的に取り組んでおり、人口増加により需要が拡大している海外市場においては、大きなチャンスがあると捉え、「ソースを極める世界ブランドに成長する」という戦略のもと、国内だけでなく海外でもソースメーカーのトップブランドを目指していく。