賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 56
賃上げ取り組み事例

有限会社幸ふく

菓子や惣菜の製造・販売

2025/3/14

賃金&モチベーションのアップで製品とサービスの品質向上へつなげる

company 企業データ
  • ●取締役会長:山元好男
  • ●代表取締役社長:森 美穂
  • ●本社所在地:山口県下関市
  • ●従業員数:22名
  • ●設立:1999年
  • ●資本金:600万円
  • ●事業内容: 菓子や惣菜の製造・販売
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賃金引上げでモチベーションアップ!

有限会社幸ふく(※)の運営するお菓子工房幸ふくでは、『幸ふくのお菓子で幸福〈HAPPY〉をお届けします』を合言葉として、彩りが美しい「幸ふくだんご」、にっこりの笑顔がかわいらしい「幸ふくまんじゅう」といったお菓子などの販売を行っている。
そんな同社では、従業員のモチベーションをあげ、自社の製品やサービスの品質向上につなげることを目的として、2023年9月にパート、アルバイトの時給を3~7%、2024年7月には正社員の給与を8~10%引き上げを行った。また、パート従業員にも賞与を支給する賃金制度を導入した。
森社長は、「賃金の引上げを通じて、スタッフからは、賃上げについてうれしかったとの声が多数あり、仕事へのモチベーションも上がっているように感じます。また、賃金引き上げは人材確保の観点からも必要ですね。」と語る。
原材料費が高騰する中、同社は、賃金引き上げに向けてどのような(制度の活用や)取組を行ったのか。同社の取組に迫ってみることとした。
(※)社名の「幸ふく」は県名産の「ふく」(ふぐ(河豚)を縁起物としてふく(福)と呼ぶ)に由来

業務改善助成金等を活用して生産性向上

自社のサービスや品質向上を図るためには、従業員のモチベーションを上げていく必要があるが、原材料費や光熱費がどんどん上がっている中で、賃金引き上げのためにどうしていけばよいのか?自問を繰り返しながら、森社長は自身で様々な支援策を調べたり、知り合いなどからの情報収集を行うなど日々賃金引上げに向けたツールがないか常にアンテナを張っていた。
そうした中で、取引先の銀行職員からの案内で、賃金引き上げと生産性向上を支援する業務改善助成金を知ることとなった。森社長は、早速この助成金を利用しようと考え、従業員とどのような設備投資を行えば生産性を向上させることができるか検討を開始した。
その中で、主力製品の団子やおまんじゅう等の製造で使用する蒸練機等を動かすために、ボイラーを使用しているが、ボイラーの蒸気量が低く、団子やおまんじゅう以外のお菓子の製造に使用する機器を同時に動かすことができず、団子やおまんじゅうの1日の製造数に制限がかかっていることがわかった。
このため、同社では、業務改善助成金を活用して、賃金の引き上げを行うとともに、上記課題解決のため従前まで使用をしていたボイラーよりも蒸気効率のよいボイラーを導入することとした。その結果、商品の製造に必要な機械をすべて稼働させることが出来るようになり、商品の製造数を増やすことができた。
また、その他の助成金・補助金も活用して、今も、生産性の向上を図っている。
たとえば、機械で丸められてレーンに流れてくる団子について、これまで手作業でトレーに並べていたが、中小企業庁のものづくり補助金を活用して専用機械を導入し、トレーに並べる作業を全自動化することにより、安定した製造や他の業務に従業員を従事させることが可能となり、品質や製造数を確保することができた。
こうした結果、製品とサービスの品質向上につながり、パッケージのリニューアルによって商品価値を上げて価格改定を行うこともでき、商品への価格転嫁も実現することができた。
また、最近では、繁忙期に頑張って働いてもらい、閑散期にはしっかり休日を取ってもらうことと、光熱費などランニングコスト削減等を目的として変形労働時間制の導入も行った。

(新たに導入したボイラー)

(団子をトレーに全自動で並べることができる機械)

幸ふくを届けるために取り組みは続く

「今後も更なる業務効率化に向けた取り組みや継続的な賃金引き上げを続けていきたい。そして、効率化でできた製造の余裕などを利用するなどして、魅力のある新たな人気商品の開発を行っていきたい」と森社長。
また、将来的には新店舗、工場の移転も視野に、さらなる事業展開を描いているとのこと。
地域を代表するお菓子屋さんである同社。今日も食べてくれた人に幸ふくが届いてほしいそんな思いを込めて従業員一丸となって魅力的なお菓子を今日も作っている。