賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 59
賃上げ取り組み事例 -
大石金属工業株式会社
金属プレス加工製品の製造販売
2025/3/31
業務改善助成金を活用し、現場との情報共有、生産・在庫管理の効率アップ
生産性向上にも繋がり、継続的な賃上げへ
大阪府を営業本部とし、岡山県、ベトナムダナンに工場を設け、ズボン用ホックなどのアパレル部品から携帯電話等の金属部品まで、幅広い金属プレス加工製品の製造販売を行う。
- 企業データ
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- ●代表取締役社長:大石 嘉久
- ●本社所在地: 大阪府大阪市
- ●従業員数:113名
- ●設立:1952年
- ●資本金:7億4000万円
- ●事業内容: 金属プレス加工製品の製造販売

生産性向上を導く賃上げ
大石金属工業株式会社は、最先端の技術力と品質第一のモノつくりを理念に掲げ、金属プレス加工製品の設計から製造・販売を行う会社である。
同社の主力商品は、私たちがほぼ毎日、衣類の着脱に使用するズボンのホックやベルトバックルといったアパレル服飾資材部品からノートパソコンの内部に使用されている電子関連部品といったものまで、多種多様な品目の取り扱いをしており、業界内でも高いシェアを誇っている。
多種多様な品目の取り扱う同社の製造においては、プレス機械で使用する金型の製作やプレス機械の取り扱いなどの様々な技術や経験、資格が求められる。
特に課題となるのが、同社では、製造過程の多くを岡山にある製造工場で行っているが、市街地から離れた場所に位置しているということもあり、求人募集を出して人手を確保することは容易ではなく、恒常的な人手不足という厳しい状況に置かれている。
そのため、同社では、人材定着のため年1回昇給に加え、技能給や職務給に目を向け、従業員のスキル等を評価し、賃金を引き上げることで、従業員の技術習得などに対するやる気を引きだすとともに生産性の向上を図っている。
この試みにより、賃上げの実施により、従業員のモチベーションを高く保つことができ、結果として生産性向上に繋がっている。これが、同社が昨今の人手不足の中でも、高い品質を維持している要因のひとつである。

(生産されている製品の見本)

(生産されている製品の見本)
助成金を活用した業務の効率化
本社(大阪府)と岡山工場の間では、従前からシステムを通じて勤怠管理、生産管理、製造工程、在庫管理等の情報共有を行っていた。
しかしながら、従前のシステムが見づらく、またシステム登録した内容の反映が遅く、従業員からは、効率や使い勝手があまり良くないとの声が社内から上がっており生産性を低下させる一因となっていた。
こういった従業員の声を受け、システムの変更を検討していたところ、取引先の企業から、業務改善助成金という生産性向上に資する設備投資等に対する支援策があることを知り、同助成金を活用して新たなサーバー等を導入し、システムを一新した。
その結果、岡山工場で入力された各種データを本社においてリアルタイムで確認できるようになり、誰にとっても扱いやすく、見やすいシステムとなったことで、入力ミスなどが減って担当者の作業効率が向上し、関連業務への従事が1日あたり2時間程度短縮でき、その分を他の作業に割り当てることが可能となった。また、これまで、従業員が各自の有給休暇残日数を確認するには紙の休暇簿をその都度確認する必要があったが、新システム導入後は、システム上で残日数を確認できるようになり、意識的な有給休暇取得にも繋がっている。

(岡山工場)
物価高に負けない賃上げを目指して
近年は、円安等の影響による原材料費の高騰が続いている。値上げをすべく、顧客と価格交渉を行うこともあるが、通年契約も多くあることから何度も交渉することは難しい。また、顧客のことを考えると、価格転嫁を踏みとどまるのが現状である。そのため同社は、自社内の一貫製造体制を強みとして、金型の特殊製造を受注することで利益を生み出し、賃上げの原資の一部としている。
特殊製造品には言わずもがな従業員の巧みな技術が必要である。岡山工場の従業員は、平均年齢30代と若く、職場の雰囲気も和気藹々としており、彼らの生活を継続する物価高から守る必要もある。賃上げにより、「匠」たちの雇用を維持し、さらにエンゲージメントも後押しして生産性向上を実現する好循環を、これからも目指していく。

(大石 嘉久代表取締役社長)