賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 62
賃上げ取り組み事例

有限会社仲松ミート

冷凍食肉卸売販売、冷凍食肉加工卸販売、冷凍食品加工下請け業務、そうざい製造業

2025/3/31

コロナ禍を克服するため、DX化、販路開拓で賃上げと苦境打破を目指す。

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:仲松 常夫
  • ●本社所在地: 沖縄県うるま市
  • ●従業員数:20名
  • ●設立:1982年
  • ●資本金:500万円
  • ●事業内容: 冷凍食肉卸売販売、冷凍食肉加工卸販売、冷凍食品加工下請け業務、そうざい製造業

コロナ禍による影響

1982年に沖縄県具志川市(現在のうるま市)で創業し、冷凍食肉加工や卸売販売を営む有限会社仲松ミート。冷凍食肉加工品やフライものなどの総菜、お祝い事や慰労会などの汁物やBBQ商品を中心に、「手作りの家庭の味」を基本に事業を営んできた。そんな同社の一大転機となったのが、新型コロナウイルスによる社会情勢の変化だ。
コロナ禍により、特に、人との接触を避けることが難しい飲食業など、対面型サービス業は過去に例のないほど大きな打撃を受けたことで、同社が得意としていた、個人商店や弁当販売業者、近隣スーパーへの卸売の売上が減少した。こうした状況を改善するため、業務の効率化や新商品の開発などに取り組むことにした。

業務効率化のためDX化に挑戦

同社は、継続的な最低賃金の引き上げを見据え、業務効率化や収益性の向上に取り組むことにした。ただ、業務効率化といっても取り組みは様々であり、どのような取り組みが自社に合っているか悩んでいた。そんな時、同社が所属する中小企業同友会のメンバーから、内閣府の『令和2年度沖縄型産業中核人材育成事業』の「製造業(食品製造業)に伴走支援できるIoT専門人材育成プログラム」にモデル企業として参加してもらえないか、と声をかけられた。「何か変わるきっかけになれば、と思い、モデル企業になることを決めた。」と語るのは同社執行役員の仲本氏。プログラムを通じ、IT企業や食品関係の企業、金融機関などから様々な質問や意見を受ける中で、製造管理が課題として浮かび上がった。
課題としてあげられた製造管理を効率化するため、同社はAI音声認識サービス『Alexa(アレクサ)』と業務改善アプリ『kintone(キントーン)』を導入することとなった。その日に製造した商品の名前と個数を音声で認識し、データを蓄積していくシンプルなシステムであったため、同社で働く高齢者や障がい者もすぐに使いこなすことができた。また、データが蓄積することで、製造に必要な原料の1ヶ月間の使用量の把握が容易になり、在庫の適正化と在庫確認に要する時間を短縮することができた。こうした取り組みが業務効率化につながり、従業員の長時間労働の削減や有給休暇の取得につながるとともに、収益改善にもつながったことから、同社は2023年、2024年と続けて30円から50円の賃上げを実施することができた。

これからも地域の食を支え続けるために

 同社は業務効率化だけでなく、販路開拓にも取り組んでいる。「業務効率化によって生まれた余剰時間を使い、小ロットでの商品や試作品の生産にも対応可能な強みを活かしつつ、現在は、レストラン向けのレトルト食品やジャム、ふるさと納税の返礼品など、主力事業の冷凍食肉加工以外で開発依頼があった製品を製造している。今後はこうした依頼受けることで蓄積する技術や製品開発のノウハウをもとにした新商品の開発、価格転嫁などにより、さらなる収益改善を目指しているが、コロナ禍を経て、販売の中心がBtoBとなっており、BtoCの販売戦略に課題がある。従業員のためにも継続的な賃上げができるよう、頑張りたい。」と仲本氏。世代交代、後継者の育成に取り組み、今後10年、20年と変わらずに地域の食を支えるため、同社の取組はまだまだ続く。