賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 63
賃上げ取り組み事例

株式会社 華山

陶磁器家庭用食器・強化医療用食器・陶磁器割烹用食器、強化給食用食器・陶磁器美術品(花瓶、額皿など)製造

2025/3/31

有田焼の伝統的な技術を守り、継承していくため賃金引き上げに取り組む

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:山本 大介
  • ●本社所在地:佐賀県西松浦郡有田町白川2-1-12
  • ●従業員数:16名
  • ●設立:1796年
  • ●資本金:2,000万円
  • ●事業内容: 陶磁器家庭用食器・強化医療用食器・陶磁器割烹用食器、強化給食用食器・陶磁器美術品(花瓶、額皿など)製造

伝統、そして変化

株式会社華山は、寛政8年(1796)年に鍋島藩の御用窯として開窯し、藩の御用窯として、大物陶磁器の生産を初めて現在まで陶磁器の生産を行っている創業200年を超える伝統のある企業である。
伝統的な陶磁器の生産技術の継承には、人手に頼る部分が大きい。
だが、近年、国産陶磁器の需要は低下傾向にあり、有田焼もその例に漏れず、原因としては海外から安価な陶磁器が輸入されるようになったことに加え、日本人の生活スタイルの変化、旅館や料亭など和食器を扱う業種の低迷などがある。さらに、物価高騰、賃上げといった社会情勢の中で会社を守っていくためには、収益力向上につながる設備投資を行い、持続的な賃上げを行う環境整備のため生産性を高めていくことが必要であり、業務改善助成金の申請に併せて、令和6年に賃上げを実施することとした。

省力化とコスト低減に向けた取り組み

同社では、窯業炉自動制御作業をマンパワーによる細やかな調整が必要であったことから、生産性やランニングコスト面で大きな課題があり、課題の解決に向けて何か出来ないか山本社長は悩んでいた。そうした中で、同社の顧問である社会保険労務士を通じて、業務改善助成金という生産性向上に資する設備投資等に対する支援策があることを知り、業務改善として、新たにO2ガス炉自動焼成装置の導入することとした。その結果、火入れ作業の完全自動化が実現し、マンパワーが必要であった調整時間や焼成時間の短縮、燃料コストの削減を行うことにより、創出された時間や削減されたコストを昇給原資に充てることが可能となった。また、ロスが現象することで、働き手のストレスも軽減され、生産性に大きく貢献することとなった。

オリジナリティには人が必要

有田焼と聞くと皆さん、価格が高いイメージがあり、手が出せないと思われる。しかし、窯元が直接手がけるからこそギリギリのコストであっても質の高いオリジナルの有田焼を提供することが可能となる。そして、その質の高い製品ができる過程には、質の高い有田焼に携わる創り手がいて、その人たちが定着していく環境が整備されていることが必要である。「今後も収益向上策を進めながら従業員の定着につながるよう、賃上げに継続的に取り組んでいきたい。」と山本社長。有田焼の伝統的な技術を守り、継承するために今日も山本社長は奮闘している。