賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 64
賃上げ取り組み事例 -
有限会社シンゴスポーツ
野球用品・スポーツ用品全般・刺繍・プリント
2025/3/31
従業員の生活を支え、お店を後世に継承していくため、刺繍やプリント技術を活用し新たな販路獲得に積極的に取り組む
- 企業データ
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- ●代表取締役:川副 伸吾
- ●本社所在地: 佐賀県小城市
- ●従業員数:5名
- ●設立:1984年
- ●資本金:500万円
- ●事業内容: 野球用品・スポーツ用品全般・刺繍・プリント
スポーツ用品店と刺繍
小城市小城町にあるスポーツ用品店「シンゴスポーツ」は、1984年に紳士服、作業着の販売をスタートし、その後先代から引き継がれ、現在は野球バットやグローブがとこせましと並ぶ、地元の野球部御用達のお店である。スポーツシーズンは、お店の繁忙期となるが、閑散期においては雇用のブレが大きく、継続的に働いてもらえるような環境整備のため、“刺繍”の受注に大きく力を入れている。刺繍は、野球等のスポーツ用品はもちろんのこと、地元消防団員の方に向けたものまで幅広く受注しており、店内はミシンがテンポ良く針を刺す音と従業員の方の小気味よい手さばきが目に鮮やかである。

新たな販路獲得に向けて
スポーツ用品を選ぶときには、その道具や競技を理解している人に聞きながら選ぶのが一番良い。ただ、近年はネット通販が普及し、店頭販売ではなくネットで購入する人も増えており、地域スポーツ用品販売がこのままスポーツ用品の販売だけで続けていくことは難しいが、刺繍という分野はスポーツだけに限られず、アパレル分野など幅広い分野でニーズがあり、この先も伸ばしていける武器になっている。
加えて、近年は、ユニホームなどへのネーム入れを特殊なインクを用いて生地にプリントを行う昇華プリントや転写シートを作成して生地にプリントする転写プリントといった手法で行うことも多くなっている。
そうした中で、旧型のプリンターを使ってプリントを行っていたが、出力不良や機器トラブルなどもあり、従業員の手作業も必要となることもあったのだが、情報交換を行っている事業者から佐賀県の助成金のことを教えてもらい、衣類や雑貨小物等様々な素材に印刷が可能なDTFプリントを導入することとした。
DTFプリントは、版を作成する必要がなく、できあがりの発色も良く、デザイン通りの仕上がりになることから衣類や雑貨小物だけでなく、様々な素材にも印刷が可能である。これにより、サービスラインナップも増え、新たな受注につながることで生産性が大幅に向上した。
また、DTFプリントを導入したことにより従業員の手作業が減ることで、業務負担が軽減されるとともに、プリンターを使用する者の習熟度に関わらず、一定の品質が担保できるようになり、商品品質の標準化も図ることが出来た。

そして、後世へ
昨今のネットの普及による様々なスポーツを取り巻く環境の変化や物価高騰の影響の中で賃上げを進めていくことは大きな経営課題の一つと言える。しかし、従業員の生活を支え、お店を後世に継承していくためにも、スポーツ用品の売り上げでなく、刺繍やプリント技術を活用し、今後も賃上げのため引き続き、新たな販路獲得に積極的に取り組んで行きたいと川副代表は語る。
素敵なご夫婦の営む地元に愛されるスポーツ用品店では、今日も未来のためミシンの針が糸を紡いでいく。
