賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 65
賃上げ取り組み事例

株式会社オレンジ
就労継続支援A型事業所 オレンジワークス

就労継続支援A型事業所

2025/4/2

生産性向上を通じ、就労継続支援の強化につなげる

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:石金 一洋
  • ●本社所在地:富山県富山市
  • ●従業員数:57名
  • ●設立:2013年
  • ●資本金:1,000万円
  • ●事業内容:就労継続支援A型事業所

労働者のためにも賃上げを

富山県で就労継続支援事業を営む株式会社オレンジ。同社は就労継続支援A型事業所等を富山県内で3か所営んでいる。就労継続支援A型事業所を営むオレンジワークスにおいては、障害者の就労訓練として、外部施設の清掃や公園の清掃・草刈り、動画編集・チラシ作成等のパソコン関連業務、木工製品の製造に取り組んでいる。こうした業務を通じて、障害者の就労支援を行っている。
就労継続支援事業所の報酬改定等の影響もあり、同業他社の廃業も多く業界の経営環境は良いとはいえない。そのような中でも、燃料費や食料品の高騰の状況下で働く方の生活も慮り、働く障害者からは賃上げの要望がなされていないものの、できうる限り賃上げをして報いたいと常務取締役の若木氏は語る。

賃上げ原資を確保するために

賃上げ原資の確保のために、まず力を入れているのは営業活動。地道に営業を行い必ず誰かがやらなければいけない業務だが人手が不足しているところを切り出して、自治体や企業からの受注に繋げることを目標に日々営業活動を行う。受注する際の単価も重要視しており、民間の同様サービスの単価を参考にして単価交渉し、賃金支給総額を割れないように注意を払っているという。さらに、同社は業務効率化による生産性の向上も目指すことにした。厚生労働省の業務改善助成金を活用し、ラジコン式草刈り機と木材加工機械を導入した。ラジコン式草刈り機は来春からの本格稼働を予定し、大幅な業務の効率化が見込まれている。また、木材加工機械の導入により、木工製品の品質向上につながった。特に、品質向上により、適切な価格設定が可能となり、賃上げ原資を確保するための価格転嫁を行うことができた。こうした取り組みにより、同社は2024年9月1日に時間換算額で92円の賃上げを達成することができた。

すべての人が仕事を通じて輝ける社会を目指して

賃上げを実施したことにより、社員から感謝の声が聞こえてきたほか、思わぬメリットもあった。それは利用者が生産性をより意識するようになったことだ。就労支援事業においては、利用者(労働者)の賃金は最低賃金に設定されていることが多く成果にかかわらず最低賃金という意識が利用者にあった。最低賃金を大きく上回る時給の引上げがあったことにより、その意識から抜け出し、時給に見合った働きをしようと利用者が生産性や成果を意識するようになった。こうした意欲は利用者自身のスキルアップや一般就労への移行にもつながる。同社は4月以降にも昇給を検討しているという。「昇給するためには、賃上げ原資となる売り上げや利益の増加を達成しなければならない。営業活動に注力するとともに生産性の向上を図ることで、利益を生み出し、できる限り利用者と社員の賃金に還元したい」と若木氏は語る。
同社の長期的な目標は、障害を持つ人でも一般企業で就労し健常者と同じように社会参加することが当たり前の社会を目指すことだ。そのため、同社のような事業は最終的に無くなることが理想だと語る。この理想に向かって同社は日々の支援に向き合い続ける。