賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 66
賃上げ取り組み事例

株式会社エスポワール

梱包・検品・ピッキングその他軽作業

2025/4/2

従業員に気持ちよく働いてもらうための待遇改善
代表取締役自身が事故により働くことが困難な状況になったという過去の経験から起業。共に働いてくれる従業員の笑顔のために。

company 企業データ
  • ●代表取締役:森西 秀明
  • ●本社所在地:大阪府大東市
  • ●従業員数:21名
  • ●設立:2014年
  • ●資本金:300万円
  • ●事業内容:梱包・検品・ピッキングその他軽作業

従業員の生活のため、助成金活用により賃上げを実施

就労継続支援A型事業所として障害をお持ちの方々を雇用し、梱包や検品、ピッキングなどの軽作業をはじめ、webデザインやweb広告、HP作成など、幅広いサービスを提供している同社。例年10月1日に改定最低賃金が発効となることから、大阪府の最低賃金の引上げにあわせて毎年9月30日に賃上げを実施しており、キャリアアップ助成金を活用することで、時間給の引上げを行った。業務の都合上、車を頻繁に利用するが、ガソリン代高騰などにより経営も苦しくなるなか、役員報酬を削ってでも賃上げに踏み切ったという。それは従業員の生活のためであり、「賃金が上がれば従業員の働くモチベーションは上がる。そうすれば時間いっぱい働き、会社に還元してくれ、結果として、売上の向上にもつながる」森西代表取締役は語った。

丁寧な合意形成

賃上げにあたっては、労使での話し合いも欠かせないという。従業員の生活のため、出来ることなら最大限叶えてあげたいと同氏は語る。一方、賃上げは自社の業績だけでなく、様々な考慮すべき要素がある中で決定していくものであり、同氏の抱く、「たくさん給料を上げてやりたい」という思いだけでどうにかできるものではないのも現実である。賃上げについては、社内の経理部門ともしっかり相談のうえ決めているほか、会社の経営状況について従業員から照会を受ければ包み隠さずオープンに語るなど、経営方針等に関わることは何でも相談・話し合いができる環境になっているようだ。また、会社の経営面の話を聞くと、時には会社を去ってしまう方もいるが、それでも残ることを選択してくれた従業員には全力でその気持ちに応えたいと同氏は語った。

人手確保・定着に向けた取組を

昨今あらゆる分野において人手不足が問題となるなか、就労継続支援を営む業界においてもその傾向は顕著である。特に、業界特有の悩みとして、離職率の高さがあげられると同氏は語る。いまいる従業員にはより長く働いてもらいたいと思っていても、実際は長く続かないことが多い。
それでも同社で働き続けることを選択してくれた従業員には感謝の気持ちで応えたい。その「応え」の1つが賃上げである。感謝の気持ちだけでなく、仕事を通じて達成感や喜びをみんなにも感じてほしいという思いも抱き、日々従業員と接しており、今後も継続的に賃上げを実施していく考えだ。また、賃上げのほか、従業員へ還元する取組として、日用品や製造物の支給も行っている。労働面では、従業員が無理をしすぎないよう、「20%のゆとりを」と常々伝え、それが浸透してきているという。一生懸命頑張ることも良いが、適度なゆとりを持つことが、働くことの継続性にもつながるし、それが結果として職場の離職率低下、人手不足への対応につながってきている。
賃上げのみならず、今後の人手不足が深刻化する世の中を乗り切って行きたいという同氏の言葉には、時代の変化に負けない経営者として熱い気持ちが込められていた。

(森西 秀明 代表取締役)