賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 67
賃上げ取り組み事例

株式会社丸十大屋

醤油、味噌の製造、調味食品の製造・販売、カフェ併設店舗の運営など

2026/4/23

業務改善助成金の活用し、生産性向上と賃上げを実現
創業180年の伝統企業、厳しい環境の中でも新たな挑戦を続ける

company 企業データ
  • ●代表取締役:佐藤 利右衛門
  • ●本社所在地:山形県山形市
  • ●従業員数:36名
  • ●設立:1844年(天保15年)
  • ●資本金:3,000万円
  • ●事業内容:醤油、味噌の製造、調味食品の製造・販売、カフェ併設店舗の運営など

モチベーション維持、人材確保のため賃上げを実施

同社は、1844年(天保15年)に紅花商として山形で創業。明治中期に醸造業へと大きく舵を切り、しょうゆ・みその生産を本格化させ、1964年には、4つの厳選したダシ(かつお節、宗田節、さば節、煮干し)を加えた「だし醤油」『味マルジュウ』を発売。山形の郷土料理「芋煮」との相性の良さから広く親しまれ、現在も同社を代表するロングセラー商品となっている。創業から約180年。伝統を受け継ぐだけでなく、同社は常に新しい挑戦を続けている。小容量タイプや減塩商品の展開に加え、しょうゆやみその魅力を活かしたスイーツやカレーを提供する直営店「蔵膳屋」をオープン。併設工場ではレトルト商品の製造にも対応するなど、新たなブランド価値の創出にも積極的に取り組んでいる。
賃上げ機運が高まる中、大手企業のように高い率の賃上げを実施することは現実的に厳しい。しかし、同社は人手不足の中、従業員の確保、モチベーションの維持のため、パート従業員に対し大幅な上昇となった最低賃金に追いつくべく2度の賃金の引き上げを実施した。

業務改善助成金を活用し、生産性向上と賃上げを実現

同社の工場では、従業員が菌類などの衛生管理には細心の注意を払いながら、時間と手間を惜しまずに醤油や味噌等を丁寧に製造している。
同社では、商品ラベルの日付印字という周辺業務を、熟練した従業員がほぼ手作業で行っており、週に数回とはいえ、多くの労働時間を割かざるを得ない状況が続いていた。そうした中、当該従業員が退職する事態が発生し、人手不足も重なったことから、作業の効率化が急務となった。このため、同社は業務改善助成金を活用してドライプリンターを導入し、併せて賃上げにも取り組むこととした。
最新のドライプリンターを導入した結果、日付印字作業に要する時間を大幅に短縮でき、削減した分の時間を他の業務へ振り向けられるようになった。これにより、長時間にわたる単純作業の負担軽減にもつながった。また、ドライプリンターは操作が容易で、短時間の訓練で誰でも扱うことができるため、熟練者に依存しない柔軟な人員配置が可能となった。さらに、必要枚数をリアルタイムで印字できることから、余剰印字や保管のムダが減り、ロス削減にも寄与している。
作業時間は従来の約3分の1にまで短縮され、たとえばシュリンクラベル 2,400 枚の貼付作業は、従来 4時間を要していたものが約 1時間 30 分まで短縮された。
なお、同社は令和 5年度にも業務改善助成金を活用し、製品タンク等を導入することで賃上げを実施している。

(助成金により導入したドライプリンター)

(シュリンクラベルの貼付作業の様子)

(「だし醤油」『味マルジュウ』)

(「減塩味噌」『みそ地蔵』)

創業180年の伝統企業、厳しい環境の中でも新たな挑戦を続ける

醤油・味噌業界は、食生活の多様化や人口減少により国内需要が縮小し、さらに大豆や米といった原料価格の高騰が続く、厳しい経営環境に置かれている。加えて、取引先への価格転嫁は容易ではなく、商品値上げは消費者離れにつながるという課題も抱えている。
こうした状況の中で同社は、県内人口が減少する厳しい市場環境に甘んじることなく、新たな販路開拓に挑戦している。首都圏への進出にとどまらず、海外にも目を向けイスラム圏で求められる「ハラール認証」を取得した商品の販売など、伝統に根ざしつつも時代に合わせて進化する製品づくりに積極的に取り組んでいる。
「180年にわたり受け継がれてきた伝統企業として、山形の食文化を守り、地域にしっかり貢献していきたい。そのためにも、できる限り売上を従業員に還元したい。」と語るのは常務取締役の渡辺淳二氏。
同社は、長い歴史の中で磨かれた技と、現代のニーズを捉えた新たな発想を組み合わせながら、これからも地域の食文化を支え続けていく。

(左から常務取締役 渡辺淳二氏、業務統括部長 東海林崇氏、製造課係長 澁谷麻衣子氏)