賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 73
賃上げ取り組み事例

株式会社コボコボ

製菓、製パン、小売り

2026/4/23

米由来の天然酵母のパンと“とろける食感の生シフォンケーキ”
ただ賃金を上げるだけではない。
従業員の生活を守り、働きがいを高めたい――その思いがすべての出発点

company 企業データ
  • ●代表取締役:内田 由美子
  • ●本社所在地:東京都府中市
  • ●従業員数:32名
  • ●設立:2021年(令和3年)
  • ●資本金:200万円
  • ●事業内容:製菓、製パン、小売り

米由来の天然酵母のパンと“とろける食感の生シフォンケーキ”

同社は2014年(平成26年)、東京都府中市に個人商店Bell’sとして創業し、2016年からは株式会社コボコボとして東京都内を中心に製菓・製パンおよび販売事業を展開している。同社が手がけるお米を主原料とする「あこ天然酵母」を用いた天然酵母パンや、独自の製法と配合で作り上げるシフォンケーキは、創業当初から多くの顧客に支持され続けている。また、季節限定や新作などバラエティ豊かな商品づくりにも挑戦し、シフォンケーキは小麦粉を極限まで減らした独自レシピで“とろける食感”を追求している。コボコボのおいしさは、素材と手間ひまへのこだわりにある。
お米由来の「あこ天然酵母」でじっくり発酵させることで、小麦本来の風味が生きた、時間が経ってもおいしいパンが焼き上がる。生地には合成添加物を使わず、長時間発酵で旨味を引き出した安心の製法を守っている。

設備投資と新業態開拓で持続的な賃上げを実現へ

近年の原材料費や光熱費の高騰は、同社にとって大きな負担となっており、人手不足も課題となっていた。同社は従業員のモチベーションアップのため最低賃金を上回る水準で賃金を設定しているが、賃上げの原資を確保するための価格転嫁は顧客離れを招く可能性があるため、設備投資をはじめとする生産性向上によりコスト構造を見直し、持続的な賃上げを可能とする体制づくりが求められていた。
こうした状況を踏まえ、同社は、持続的な賃上げの実現に向け、「生産性の向上」と「新たな業態への挑戦」の二つ重点的に取り組むことにした。
まず、生産性向上に向けて、同社は業務改善助成金を活用し、オーブンや食洗機などの設備導入を進めた。特に食洗機の導入は効果が大きく、従来は手作業で約6時間かかっていた洗浄作業が、機械化によって約3時間に短縮された。また、手作業の削減は従業員の身体的負担の軽減にもつながり、単なるコスト削減にとどまらず、限られた人数でより高い付加価値を生み出すことが可能となった。
さらに同社では、「新たな業態への挑戦」を進めている。パンの販売に加え、カフェレストランでのランチ提供、イベントでの催事販売、ネット販売など、新たな業態へと展開。商品単価の高い分野への進出を図ることで、売上の多角化と収益性の向上を目指している。
既存事業の見直しと新規販路の拡大を組み合わせることで経営基盤を強化し、賃上げの原資となる利益の確保につなげていく方針である。

(業務改善助成金より導入した食洗機)

(東京ドームラクーア内DELI&DISHの店舗)

ただ賃金を上げるだけではない。
従業員の生活を守り、働きがいを高めたい――その思いがすべての出発点

近年の原材料や光熱費の高騰は重い負担となり、経営環境は決して楽ではない。それでも同社は、最低賃金を上回る水準での賃上げを進めてきた。
その背景には、従業員に対する強い想いがあった。
「作業環境の改善点や賃上げに取り組む中で、今まで気がつけなかった現場や経営上の課題に気がつくことができ、課題を解決してく中で従業員と同じ方向を向くことで、仕事に向き合う姿勢が変わっていきました。」
また、賃上げの効果は採用にも現れている。新たな人材が集まり、既存従業員の定着率も改善している。
「“ここで働き続けたい”と思ってもらえることは、企業にとって何より大きい財産です。」
「作業環境が改善し働きやすさが向上すると、不思議と“もっと良い仕事をしたい”という気持ちが湧いてくるんです。設備投資は単なる効率化ではなく、従業員のやりがいにも直結しています。」
一方で、課題も見えてきた。
「人件費が増えると、当然ながら短期的には利益が圧迫されます。だからこそ、これまで以上に資金管理が重要になりました。また、賃上げによる水準の底上げによって賃金差が縮まり、職務やスキルに応じた評価制度の見直しも求められています。」
「課題もまだまだありますが、賃上げは“単独で終わる施策”ではありません。経営改善、人事制度改革、業務効率化、すべてがつながって初めて意味を持ちます。」
「私たちが目指すのは、生産性向上 → 収益力強化 → 持続的な賃上げ」という好循環をつくることです。従業員と会社が一緒に成長し続けられる企業であるために、これからも挑戦を続けていきます。」
その横顔には、決意を固めた経営者だけがまとう、深く静かな熱がそっと灯っていた。
同社の挑戦は、まるで夜明け前の光のように、これからさらに広がっていく。

(同社工場)

(同社の従業員の皆さん)