賃金引き上げに向けた取組事例
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CASE STUDY 75
賃上げ取り組み事例 -
株式会社有隣堂
書籍、文房具、雑貨等の販売、カフェ併設店舗の運営など
2026/4/23
業務改善助成金の活用により生産性向上へ
本を愛する従業員に気持ちよく働いてもらうための待遇改善を実現
- 企業データ
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- ●代表取締役 社長執行役員:松信 健太郎
- ●本社所在地:神奈川県横浜市
- ●従業員数:2,323名
- ●設立:1909年
- ●資本金:5,000万円
- ●事業内容:書籍、文房具、雑貨等の販売、カフェ併設店舗の運営など
従業員の生活のため、助成金活用により賃上げを実施
同社は1909年(明治42年)に横浜で創業した老舗書店である。現在は首都圏を中心に店舗を展開。社名は「論語」の「徳不狐必有隣」に由来し文化と教育を通じて地域社会に貢献することを基本理念としている。書籍販売にとどまらず。文具や雑貨、楽器、法人向け事務機器、さらには図書館運営や出版事業など幅広い分野に事業を拡大。経営方針としては、効率的な経営による永続的な発展と従業員福祉の向上を掲げる。近年は複合的店舗の展開やイベント企画を強化するほか、46万人以上のチャンネル登録者数を有するYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」を発信。書店の枠を超えた文化拠点としての役割を目指している。
業務改善助成金を活用し賃上げ原資を確保
同社では、従業員一人ひとりが「本を愛し、本とともに生きる」という思いを胸に、日々お客様に最高のサービスを届けている。こうした従業員の誇りを守り、より働きやすい環境を整えるため、本年度、従業員を対象に賃上げを実施した。今回の賃上げには、従業員の相互扶助や労働条件の向上改善を担う組織である「社員会」から寄せられた「スタッフの待遇を改善し、モチベーションを高めたい」という声が背景の1つにある。また、優秀な若手社員には昇給・昇格を早める仕組みを導入するなど、キャリア形成を後押しする制度も整備している。
書店業界を取り巻く厳しい経営環境の中で、従業員に利益を還元するためには、生産性を高めることで利益率の向上を図り、賃上げの原資を確保することが不可欠である。同社では長年の課題であった「書籍の万引き」を防止することで損失を減少させ、また、不十分であった在庫管理等を徹底することに着手した。そこで、厚生労働省の業務改善助成金を活用し、RFIDタグ(ICタグ)を装着して管理するRFIDタグシステム(株式会社PubteX)を導入した。これは、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み取り、瞬時に個体を識別することが可能となるものである。
RFIDタグシステム導入前は、入荷や返品時に現物検品を行わず、伝票や取引先データとの不整合が頻発していた。棚卸しも年1回、外部委託で実施しており、書籍の差異の原因分析に多くの時間とコストを要していた。このため、在庫管理や売れ筋商品の把握が不十分で、マーケティングに活かせない状況が続いてた。さらに、万引き対策として防犯カメラを設置していたものの、万引き犯を確認・特定するため映像確認や証拠収集に膨大な労力がかかり、スタッフの負担が生じていた。
RFIDタグシステム導入後は、入荷・返品時の検品が効率化され、現物とデータの整合性が確保され、棚卸しも従業員が短時間で実施でき、在庫精度が向上した。さらに、商品単品情報と販売データの自動連携により、売れ筋の分析、顧客動向の把握が可能となり、マーケティングに活用できるようになった。RFIDタグシステムと連動した防犯ゲートの設置により、冊数で万引きの被害が85%減少し、対応に要する労力が大幅に削減されるとともに、従業員の心理的負担が軽減した。
(伊勢佐木町本店に設置した防犯ゲート)
(検品や棚卸などに利用するハンディリーダー)
本を愛する従業員の人手確保・定着に向けた取組を
有隣堂で働くスタッフは、本を愛し、この仕事に誇りを持っていると話すのは経理企画本部の永堀太朗氏。その思いに応えるため、経営環境が厳しい中でも、可能な限りの処遇改善を実現したいという。従業員の処遇改善やキャリア支援に取り組みながら、創業以来追求してきた「お客様の幸せに貢献し、誰もが健やかで心豊かに生きられる社会の実現」を胸に、地域社会とともに新たな価値の創造に挑戦し続ける。
(執行役員経営企画本部 副本部長 永堀太朗 氏)














