賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 80
賃上げ取り組み事例

株式会社アーバン大分

婦人服縫製加工業

2026/4/23

業務改善助成金を活用し、ミシン作業や技術指導の時間を確保、質の高い製品に
国産衣類を支える人材育成と生産性向上

company 企業データ
  • ●代表取締役:井上 松太郎
  • ●本社所在地:大分県日田市財津町
  • ●従業員数:44名
  • ●設立:1974年(昭和49年)/大分支社:1989年(平成元年)
  • ●資本金:1,000万円
  • ●事業内容:婦人服縫製加工業

国内で流通する衣類のうち、「国産衣類」はわずか1.5%

同社は1974年(昭和49年)に大阪府で創業した老舗の婦人服縫製加工会社の大分工場。国内で流通する国産衣類はわずか1.5%(※1)の現在に、同社は国産の高級婦人服を生産・提供している。(※1出所:日本繊維輸入組合「日本のアパレル 市場と輸入品概況」(1992-2023))
コストの低い海外生産が主流となる衣類業界で、確かな縫製技術と豊かな知識等による国産衣類を強みとする同社では、デザイン系の専門学校卒者や外国人労働者を積極的に受け入れ、1級洋裁技能士(※2)である社長の井上氏による技術指導にも力を入れている。
(※2 技能士・技能検定:厚生労働省が策定した実施計画をもとに各試験機関が実施する技能検定に合格した者。技能検定は、職業能力開発促進法に基づき、労働者の有する技能を一定の基準によって検定し、これを公証する国家検定制度。)

業務改善助成金を活用し、ミシン作業や技術指導の時間を確保 質の高い製品に

同社には仕事で「ミシンをやりたい」、「服を作りたい」と入社する方も多い。しかし、婦人服の製造工程は、パターンメイク→企画→グレーディング・マーキング→裁断→ミシン・アイロン→まとめ・検品…など多くの工程を経るため、作業量も多く、中々希望するミシン作業や技術指導に時間を割くことが難しい時期もあった。
こうした悩みを抱えていたところ、なじみのミシン屋さんから設備投資に関する政府の助成金(業務改善助成金、働き方改革推進支援助成金等)を紹介されたことをきっかけに、各助成金の受給要件(賃金引上げ等)をクリアして、製造工程の一部を機械化、時短・省力化を図った。
例えば、生地の裁断工程では、これまで型紙にあわせて手作業で裁断していたところ、自動裁断機(P-CAM161・SHIMA SEIKI製)の導入により、型紙の情報どおりに、生地を圧縮した状態で約3㎝の高さまで同時に裁断できるようになった。また、型紙作成もプロッタ(VC2-A1000・MUTOH製)の導入で正確かつ高速で行えるように。
ほかにも、長尺物の縫製向けのミシン(LSN-430・PEGASUS製)や、ミシン台が筒状になっている袖口縫製向けのミシン(DSU-142-7・JUKI製)等を導入し、生産性向上だけでなく、綺麗なステッチにしやすくなり、さらに従業員の身体への負担軽減が実現した。
そして、これらの設備投資により、製造工程全体として、作業効率が飛躍的に向上し、従業員がミシン作業を行う時間や社長が技術指導する時間も確保できるようになった。

P-CAM161・SHIMA SEIKI製(積層式自動裁断機)

VC2-A1000・MUTOH製
(プロッタ:プリンター+カッター)

(通常のミシン)

LSN-430・PEGASUS製
(スラックス等の長尺物を一気に縫製可能に)

DSU-142-7・JUKI製
(筒状のミシン台で生地+ゴムを伸ばしながらの袖口縫製時が楽かつステッチも綺麗に)

国産衣類を支える人材育成と生産性向上

縫製加工業界は人件費の価格転嫁があまり進まず、利益を出しづらい環境に置かれている。また、労働力確保が難しい地方部にて、「国産衣類」にこだわる同社。従業員には長く働いて技術と知識を身に着けてもらい、人材育成や生産性の向上に取り組むことで、賃上げ原資の確保に努めている。また、外国人労働者も積極的に受け入れており、言語の違いに戸惑いつつも、裁縫技術の指導を通じ、多様な人材が活躍出来る環境の整備にも取り組む。
今後も政府の支援策を活用して生産性の向上を通じ、優秀な技能労働者の育成と「国産衣類」を提供し続ける。

(代表取締役社長 井上 松太郎 氏)